気になる犬の脱毛症、発症する理由や原因について【獣医師執筆】

気になる脱毛症、発症する理由や原因について

執筆者:増田国充先生
獣医師、ますだ動物クリニック院長

犬

そもそも毛とは?

犬は全身が美しい毛で覆われています。そのモフモフ感がたまらないという方も多いのではないでしょうか。犬種によって長毛や短毛、毛質も様々です。この違いで見た目も大きく変わっていき特徴や個性につながっていきます。その「毛」ですが、基本的な構造は人間の頭髪とほぼ同じものと考えてよいと思います。

体表には無数の毛穴=毛包(もうほう)があります。この毛穴から複数の毛が生えています。人間は、一つの毛穴から1本から3本ほど毛が生えています。犬の場合、犬種によって異なりますが10本以上生えている場合もあります。

また、柴犬のように冬毛、夏毛で毛のボリュームが変化する犬種では、「ダブルコート」と呼ばれる2種類の質の異なる毛が存在します。一つは、太い毛質で比較的長さのあるオーバーコート(一次毛)と呼びます。主に皮膚を外からの刺激から守る役割を果たします。

もう一つはアンダーコート(二次毛)といわれるもので、細く柔らかい構造をしていて主に温度や湿度のコントロールをするのが主な働きです。秋から冬にかけてもう量が増えモコモコになるのは、このアンダーコートの量が季節によって変化するからなのです。

代表的なシングルコートの犬種:ボストンテリア、トイ・プードル、ミニチュア・シュナウザー

代表的なダブルコートの犬種:柴犬、ウェルシュ・コーギー、ミニチュア・ダックスフンド

毛が生え変わるサイクル

被毛は一定のサイクルで成長が活発になり、逆にお休みをすることがあります。犬の場合は季節的な要因が関係してきます。ここにはいくつかのホルモンや自律神経等が関連し、その個体(犬種)に適した時期に適した被毛量と長さになります。

サイクルが安定していることが重要です。被毛はある時点で毛根から抜け落ちますが、それを補うように次の被毛が別の毛穴から生える結果、全体的にボリュームが変化しない状態を維持しているのです。

被毛がなくなる、被毛が減るとは

ここまで、被毛に関する基礎的な部分をご紹介しました。毛の長さや量が一定のバランスを保っているのは、毛根で繰り返される発毛のサイクルが正常に機能していることが重要であると説明しました。従いまして、これらホルモンバランスや自律神経のバランスが乱れることによって本来の発毛のサイクルが変化を生じ、毛が生えない状態を引き起こす場合があります。

しかも、犬や猫は全身を被毛でおおわれている生き物なので、ちょっとした毛の生え方の変化が全身の見栄えに大きく影響します。また、被毛自体に体温調節や外部からの防御を行う重要な働きもありますので、皮膚そのものに及ぼす影響も決して小さくありません。

脱毛が及ぶ部位も様々です。例えば、耳やおなかなど体の一部分だけが脱毛することがあります。その一方で、脱毛の範囲が全身に及ぶこともあります。脱毛がある場合、その多くはかゆみを伴いますが、原因によって全くかゆみが生じない脱毛症も存在します。

診療していると「かゆみがないけど毛が抜けるんですが、これって皮膚病ですか?」というお尋ねが時々あります。

では、具体的にどのような条件で被毛がなくなる、あるいは減ってしまうのでしょうか?

これには大きく分けて3つの要因があります。

・対外の問題が原因によるもの

・体内の問題が原因で生じるもの

・これらの複合したもの

一般に被毛が減ってしまうのは皮膚の問題やケガなどによるものと考えがちですが、実は非常に多くの要因が関係していることがあります。そのため、獣医師も脱毛が生じている原因をきちんと見極め、正確な診断をつけるために様々なアプローチをして解決に導こうとします。

体外の問題が原因で生じる脱毛症

自分の体の外側で生じる脱毛は、体外から何らかの刺激が被毛あるいは皮膚に生じたことにより物理的に被毛が減ってしまうもの、感染症や寄生虫に由来するものなどがあります。

・外傷

皮膚に強い物理的な刺激が加わったことによって毛が抜けます。擦り傷、化学物質ややけどなどによる刺激、首輪やハーネスによって日常的な使用による脱毛などがあります。また、大型犬で生じやすい肘の部分のタコ(胼胝(べんち))も肘にかかる負担によって生じた脱毛の一つといえます。

・感染症

脱毛を生じさせる感染症には、細菌、カビの仲間である真菌、寄生虫などがあります。

・細菌に由来する脱毛

膿皮症ともいわれ、ブドウ球菌をはじめさまざまな細菌によって皮膚炎をおこします。その結果多くの場合かゆみを伴う円形の脱毛斑が単発あるいは多数形成されることが多くみられます。

・真菌に由来する脱毛

皮膚糸状菌(白癬菌)やマラセチア皮膚炎が代表的なものです。前者は人畜共通の皮膚感染症で主に子犬で見られやすい皮膚病です。リング状の脱毛がみられることが多い傾向にあります。マラセチア皮膚炎は脂漏症や犬アトピー性皮膚炎に合わせて見られる皮膚炎の一つです。脱毛のほか、においを伴い皮膚のべたつきがみられるのが特徴です。

・寄生虫に由来する脱毛

ノミやダニの寄生によって脱毛がみられる場合があります。ノミに吸血されると、ノミの唾液に対しアレルギーがある場合非常に強いかゆみを生じます。強く頻繁に掻くことでジュクジュクした脱毛(湿疹)を生じます。ダニによるものは、マダニ、疥癬、毛包虫(アカラス、ニキビダニ)などが代表的です。一般にかゆみが強く生じます。疥癬は主に顔や足先で皮膚の角質が厚くなり、非常に強いかゆみが生じます。毛包虫は毛穴の炎症や皮膚の黒ずみ(色素沈着)を生じ、免疫機能の低下が関連していることが多いため、若齢か高齢の犬で増える傾向にあります。

体内の問題が原因で生じる脱毛症

先ほどは、外傷や寄生虫、感染症など犬自身の体外の要因が脱毛につながるものを紹介しましたが、原因はそれだけではありません。からだの内部の問題が脱毛症を引き起こす場合があります。

発毛周期について先ほど紹介しましたが、これが何らかの原因で正常な生え変わりが妨げられた結果毛がなくなってしまったものがこれに当たります。ホルモンの分泌が正常と異なる場合、このような問題を生じやすくなります。

ホルモンの分泌異常によるもの

体内には非常に多くのホルモンが存在し、一定の健康状態を維持するために周囲の環境の変化や体内の変動に合わせて機能を微調整しています。このホルモンの分泌による脱毛症が存在します。

甲状腺機能低下症:恒例の大型犬で多くみられます。生活の中で活力を生み出すホルモンの一つである甲状腺ホルモンの分泌が減少することで生じる疾患で、皮膚の黒ずみ(色素沈着)が皮膚の主な症状ですが、脱毛がみられることがあります。

副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群):副腎では、様々な種類のホルモンを分泌しています。この副腎の機能が正常よりも過剰に働くことによって脱毛を生じることがあります。腹部や胸部といった体幹に左右対称の脱毛を伴います。皮膚が非常に薄くなり、カルシウム沈着といわれる部分的に皮膚が固い部分がみられる場合があります。

性ホルモンに関する脱毛:性ホルモンも被毛のバランスに大きな影響を与えます。去勢や避妊を行ったことによる脱毛や、去勢や避妊を行ったことで脱毛が改善するものもあります。

腫瘍

皮膚に腫瘍ができることによってその部分が脱毛となって表れる場合と、先ほどのホルモンを分泌する器官が腫瘍になったことによってホルモン分泌異常を生じた結果脱毛を生じる場合があります。

皮膚腫瘍:皮膚腫瘍には良性のもの、悪性のものと非常に多岐にわたります。両性のものでは皮膚組織球種、加齢性のイボなどがあり、悪性のものだと肥満細胞腫や皮膚に生じるリンパ腫などが挙げられます。できものの組織検査を行い、原因に合わせて外科的な摘出手術や化学療法を行うことがあります。

ホルモン分泌器官の腫瘍:犬で比較的多いのが、精巣や卵巣に由来する腫瘍です。これらの腫瘍の場合、脱毛以外に生殖器に肉眼的な変化が生じていることが多いです。

栄養の欠乏によって生じる脱毛

稀ですが、皮膚の健康に必要とされる栄養素の不足やバランスの乱れによって脱毛を生じることがあります。亜鉛は皮膚の健康な角質を維持するために重要な成分の一つといわれます。亜鉛反応性皮膚症という皮膚疾患がありますが、皮膚の角質の代謝に異常をきたすことがあります。

その他特殊な例

アロペシアX:ポメラニアンに生じる脱毛症です。少数ですが、トイ・プードルやシベリアン・ハスキーでも確認されることがあります。Xというのは「謎」という意味合いがあります。その名の通り詳細なメカニズムはまだ不明とされる点が多いのですが、発現する犬種がほぼ限定されていること、比較的若いオスで見られる点が特徴となります。通常かゆみや炎症を伴うことはありませんが、脱毛によって皮膚が乾燥した影響で時折皮膚炎が生じることがあります。

犬の色素失調性脱毛:この脱毛の原因は遺伝性といわれ、一般に毛色がブルーの個体にみられます。炎症やかゆみが生じるものではなく、色素に関連するメラニンの形成や毛包の構造によって毛が生えにくい条件を作り出すと考えられています。広い範囲で脱毛することが多く、確立された治療法がありません。

体内、体外の両方に問題が生じている脱毛症

ここまで、体の外側あるいは内側にある原因によって生じる脱毛について紹介してきました。実際に脱毛を生じて来院される犬を診察すると、体外、体内いずれの要因も絡んで生じているケースが非常に多いのです。

例えば、ノミアレルギー性皮膚炎はノミが犬に吸血します。この吸血によってアレルギー反応が生じます。強いかゆみと炎症が体の内部で生じた結果、その部分を掻いて皮膚の表面の毛が抜けるほどにしてしまいます。アレルギーと物理的な擦過によって症状をさらに悪化します。ジュクジュクした皮膚表面に細菌が感染するとさらに条件が悪くなります。

また、犬アトピー性皮膚炎も様々なアレルギーが関連していますが、多くの場合皮膚の正常な構造が保てなくなり、これがもとで細菌やマラセチアといった皮膚からの感染を起こしやすくしてしまっている側面があります。

脱毛を生じる原因が複数にわたって存在する場合、それらすべての原因の存在を把握しなければいけない点、それに合わせて多方面から皮膚の状態を改善させていく必要がある点など、道のりが長くなることもよくあります。原因が複合しているときは、お薬による治療だけでなく、シャンプーや食事、生活環境に至るまで見直しや改善を必要とするケースが多いのが特徴です。

良質な毛並みは健康のバロメーター

体の中で「最大の臓器」とも表現される皮膚ですが、この皮膚の状態がよく反映されるのが被毛です。ここまで例として挙げたものは脱毛症のすべてを網羅したものではありません。また典型的な特徴がない脱毛症や、原因が異なるものの症状が似通ったものもたくさんあり、診断に至るのが難しい場合もあります。原因が異なれば、当然治療法も変化します。診断が下っても治療し改善に至るには長期間要するものや、改善が困難なものもあります。

おうちの方にとって、愛犬の脱毛は日頃目にする部分であるゆえどうしてもきになってしまいます。予防によって防げるもの、そうでないものとありますが、目につく部分だからこそその変化にいち早く気づくことが出来るのはおうちの方でもあります。

ご家庭でシャンプーをしたとき、ブラッシングをしたときなど、皮膚や被毛に普段よりも注意深く観察してみましょう。実はちょっとした変化が脱毛症になる前段階である可能性があります。

〇参考文献

小動物臨床のための5分間コンサルト インターズー

執筆者

増田国充先生
獣医師、ますだ動物クリニック院長

経歴
2001年北里大学獣医学部獣医学科卒業、獣医師免許取得
2001~2007 名古屋市、および静岡県内の動物病院で勤務
2007年ますだ動物クリニック開院

所属学術団体
比較統合医療学会、日本獣医がん学会、日本獣医循環器学会、日本獣医再生医療学会、(公社)静岡県獣医師会、災害動物医療研究会認定VMAT、日本メディカルアロマテラピー協会認定アニマルアロマテラピスト、日本ペットマッサージ協会理事、ペット薬膳国際協会理事、日本伝統獣医学会主催第4回小動物臨床鍼灸学コース修了、専門学校ルネサンス・ペット・アカデミー非常勤講師、JTCVM国際中獣医学院日本校認定講師兼事務局長、JPCM日本ペット中医学研究会認定中医学アドバイザー、AHIOアニマル国際ハーブボール協会顧問、中国伝統獣医学国際培訓研究センター客員研究員

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