猫にとってつらい症状となる口内炎はなぜ起こる?その理由と治療法【獣医師執筆】

猫の口内炎について

執筆者:増田国充先生
獣医師、ますだ動物クリニック院長

口内炎が痛そうな猫

猫の口内炎はなぜ起こるのか

私たち人間は、生活が不規則になった場合や食事のアンバランスなどがあった場合、舌や口腔粘膜に口内炎が出来ます。大きさとして直径1~2mmくらいで、1週間もすれば治ってしまうことがほとんどですが、猫の場合は残念ながらそうではありません。

猫で生じる口内炎は、影響の及ぶ範囲が非常に広いばかりでなく、なかなか治らない点が大きく異なります。そのため、われわれが思う口内炎とは全く規模が異なり、影響が大きく及んでしまいます。

では、猫の口内炎はどのようにして発生してしまうのかを解説しましょう。

実は猫の口内炎を発生させる決定的な原因が解明されているわけではありませんが、口内炎が発生しやすくなる要因がいくつか存在します。

ウイルス感染

猫白血病ウイルス(FeLV)や猫免疫不全ウイルス(FIV)陽性の猫では発症リスクが高まります。また猫カリシウイルス(FCV)という本来猫にカゼ症状と口の中で水疱や潰瘍を生じる病原体がありますが、慢性口内炎の病変部から高い確率で検出されていることから、このウイルスによる関与が注目されています。

また、猫白血病ウイルスや猫免疫不全ウイルスは、口内炎を発生しやすくなるばかりでなく、腫瘍を発生させやすくし、また他の病気の改善を妨げる場合もあり、猫にとっては非常に厄介な病原体となっています。

細菌感染

ウイルスだけでなく、細菌感染が関係していることがあります。主に歯周病に関連するもので、歯石が多く付着している場合が多くみられます。歯周病に関連している細菌だけでなく、他の細菌も口内炎の発症要因となる場合があります。

免疫バランスに不調をきたしている場合

猫免疫不全ウイルス感染によって免疫機能が十分に機能しない場合は、口内炎が発生しやすい要因を作ります。逆に免疫の反応が過剰になっている場合、つまりアレルギーが一因となって口内炎に関与することがあります。

従って、免疫のバランスが十分に取れていない状態は口内炎が発生しやすいということになります。

物理的な刺激

口の中の異物、刺激性のあるものを口にしたことによって粘膜の傷害を引き起こすことがあります。鋭利なものを口にした場合は口腔内に傷を作りやすくなります。

その他

人間と同じように栄養状態の悪化も口内炎の悪化要因になります。また、腎臓や肝臓の病気によって口内炎が発生する場合があります。

上記のような要因が、一つだけでなく複合して発症に至ることがあります。猫の口内炎の発生率はおよそ6%という報告があり、決して珍しい疾患ではないといえます。

猫の口内炎の症状

では、猫の口内炎の症状にはどのようなものあるのでしょうか?病変部が口の中全体に発生します。とりわけ、歯茎や上顎と下顎の境界になる部分付近に多発する傾向があります。

症状としてまず目につきやすいのが、食べる様子に変化が生じることです。食べるたびに食べ物が患部に触れるため痛みが生じ、食べづらい様子が見られます。

また、食欲はあるものの食べる行為がつらいものとなるため、よだれの量が多くなります。炎症の存在から、口臭が強いことも特徴のひとつとして挙げられます。

これが進行していくと、食欲そのものが減退し水や唾液を飲みこむことも困難になります。その結果、体重減少や脱水を生じ衰弱に至る場合があります。

口の中に強い痛みがあるため、口元を触られることを極度に嫌います。毛づくろいをしなくなるために毛並みの悪化がみられる場合があります。

口の中の様子を確認してみると、口の中の粘膜、歯茎、のどの入り口付近に赤くただれた炎症が確認されます。場合によって、肉芽腫といわれるできもののようなものが形成されることがあります。

非常に強い痛みと不快感が続くため猫にとってつらい状態となりやすく、またおうちの方にとってもこの症状が治りにくく長期間の付き合いとなるため、精神的な負担になる場合があります。

猫の口内炎

(猫の口内炎)

猫の口内炎の治療

結論からいいますと、猫の口内炎は難治性であること、さらに複数の要因が関連している場合が多いため、「この治療を行えば100%完治する」ということではなく、個体の持病や症状の程度に合わせて治療方法を選択していくこととなります。

原則は、現在生じている症状に対する治療を行います。原因となっているものが明確である場合は優先してそちらに対処します。

歯科治療が効果を示すことがあります。歯石の存在が細菌が生息しやすい環境を提供することにつながり、この細菌が炎症を助長する元となります。歯石のコントロールを行うことで口腔内環境の改善を図ります。

さらに大がかりな処置となりますが、全臼歯抜歯や全抜歯を行うことがあります。口腔内にある歯を抜くことで高い確率で症状を改善に導くことが出来ます。同時に医療用レーザを照射することもあります。これらの方法は全身麻酔を用いて実施します。

麻酔を用いずに内科的な方法で治療行う場合は、痛みや炎症の緩和を第一に行います。この際、鎮痛剤や炎症を抑制させる効果の高いステロイドを使用することがあります。一時的に症状が緩和しますが、根本的な治療ではないために再発することを念頭に置かなくてはなりません。

ステロイドというお薬は長期にわたって使用することで副反応や他の病気を誘発する恐れがあるため、安易に継続すべきものではないと考えられます。

猫の口内炎にならないために

猫の口内炎は、一度発症するとなかなか治りにくいほか、猫ちゃんにもおうちの方にも大きな負担となる場合があります。従いまして、口内炎にならないように体の調子を整えていくことが非常に重要となります。

冒頭で説明しましたが、猫の口内炎にはウイルス感染の有無で発症リスクが大きく変化します。つまり、ウイルス感染から身を守ることがひいては口内炎が発生しにくいからだの構築に関与する、ということになります。適切なワクチンプラグラムに則ったワクチン接種を実施することが対策の一つとなります。

また、屋外では猫白血病ウイルスや猫免疫不全ウイルスをもっている猫が存在します。屋外に出て他の猫とケンカした際に体内にウイルスが侵入してしまう場合がありますので、室内飼育をすることが口内炎を起こしにくい条件となります。

口腔内の健康管理にも日頃から気をかけてみましょう。歯垢や歯石の付着から歯周病に発展します。日頃から歯磨きをはじめとしたデンタルケアを行うことも予防につながります。そもそも猫への歯磨きは、犬の場合よりも時間や手間を要することがあります。小さい時から歯磨きに慣れておくのが最大のポイントとなります。

他の病気が原因で口内炎が発生してしまう場合があります。その場合は、原因となっている病気の治療を行うことで口内炎が発生しにくくなるように努めます。さらに免疫力が低下している、あるいは免疫が過敏な状態、つまりアレルギーが生じやすい状態も口内炎を誘発してしまいます。本来必要な免疫のバランスが上手に保てているかどうかは、口内炎の発生に大きく関与しています。

このように複合的な要因で口内炎の症状が発生しやすくなるほか、悪化してしまう要因となることがあります

免疫力が口内炎の症状を左右する?

いかにして猫の口内炎にならないようにするかがポイントとなりますが、何か特別なことを行わなければならないというわけではありません。ワクチン接種や、病原体と接触する機会を極力避けることで感染症から身を守ること、必要とされる栄養をしっかり摂取できる食餌を提供するなど、猫にとって健康に良いことを持続して行うことが口内炎の発生を抑制させるコツとなっているのです。

免疫のバランスが口内炎の存在に大きな影響を与えているのですが、これについても上記のような猫にとって上質な生活環境を整えてあげる点が共通しています。これらにご配慮いただいた上で、さらに猫ちゃんにしてあげられることとして良好な免疫状態の維持を補助してくれる食品やサプリメントを取り込むことが挙げられます。

免疫細胞の働きを活発化させ、適度なバランスをとることはサプリメント摂取は意味がある手段となります。それに加えて、適度な運動や十分な睡眠、過度なストレス状態にさせないといったおうちの方の気づかいや愛情が、口内炎から愛猫を守っているではないかと思います。

執筆者

増田国充先生
獣医師、ますだ動物クリニック院長

経歴
2001年北里大学獣医学部獣医学科卒業、獣医師免許取得
2001~2007 名古屋市、および静岡県内の動物病院で勤務
2007年ますだ動物クリニック開院

所属学術団体
比較統合医療学会、日本獣医がん学会、日本獣医循環器学会、日本獣医再生医療学会、(公社)静岡県獣医師会、災害動物医療研究会認定VMAT、日本メディカルアロマテラピー協会認定アニマルアロマテラピスト、日本ペットマッサージ協会理事、ペット薬膳国際協会理事、日本伝統獣医学会主催第4回小動物臨床鍼灸学コース修了、専門学校ルネサンス・ペット・アカデミー非常勤講師、JTCVM国際中獣医学院日本校認定講師兼事務局長、JPCM日本ペット中医学研究会認定中医学アドバイザー、AHIOアニマル国際ハーブボール協会顧問、中国伝統獣医学国際培訓研究センター客員研究員

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