猫カリシウイルス感染症はどんな病気?その原因と治療や予防について【獣医師執筆】

執筆者:増田国充先生
獣医師、ますだ動物クリニック院長

ねこ イラスト

猫カリシウイルス感染症とは

猫カリシウイルス感染症という病気をご存知でしょうか?この病気の名前は広く知られていないかもしれませんが、「猫のカゼ」の症状を引き起こす原因の一つとされています。実は猫のカゼと呼ばれる症状を引き起こす病原体は一つではなく、ウイルスから細菌の仲間まで数多く存在します。

今回のテーマである猫カリシウイルスは、カゼ症状を示すほか特徴的な口の中の病変を伴うことが知られています。また、一部の猫では猫カリシウイルスによって関節炎をひき超すこともあり、とりわけカゼ症状を起こす他の病原体であるヘルペスウイルスによるカゼ症状に比べて重症になりやすい傾向にあります。

さて、この猫カリシウイルスですが主に6週~10週齢以上の子猫がもっとも感染しやすいといわれています。ワクチン接種が行われていない時期に感染することが十分にありうるということになります。例えば、子猫を拾ったときにすでにカゼ症状があり、猫カリシウイルス感染症だった…ということもあるかもしれません。

このウイルスは、発症した猫や既に症状が回復して見た目上健康に見える猫から排出された分泌液の中に含まれており、これらが口あるいは鼻から取り込まれることによって感染が成立します。ウイルスが体内に入っても必ずしも発症するということではありませんが、多くの場合一度感染すると体内から完全にウイルスを排除するまでに数か月を要することがあります。また、同居猫がいる場合は、環境中からウイルスを排除することが難しくなり、場合によって再感染するということが生じます。

近年、猫カリシウイルスのなかでもとりわけ病原性の強い強毒全身性猫カリシウイルス(VS-FCV)の存在が海外で確認され、このタイプは成猫でより重症化しやすい傾向にあります。

また、猫カリシウイルスの存在がカゼ症状とは別に、非常に厄介な猫の口内炎や歯肉炎に関与しているのではないかといわれています。ある報告では、慢性口内炎の猫から猫カリシウイルスが検出されており、その関連性が注目されています。

このウイルスは伝染力が非常に強いため、特に多頭飼育や繁殖場といった多くの猫の存在する環境で感染率が高い傾向にあります。ウイルスが環境中に放出されてから1か月以上感染力を持ち続けることが出来ること、さらにこのウイルス自体がヒトのインフルエンザウイルスと同じように変異(質を変えること)を起こしやすいといった性質も持ち合わせているため、一度感染した猫でも変異した猫カリシウイルスに感染して発症を引き起こす可能性があります。

このようにカリシウイルスには数多くのタイプがあり、特に若齢で多頭飼育である環境で感染リスクが高まり、カゼ症状やこのウイルス特有の症状を起こします。

猫カリシウイルス感染症の症状

猫カリシウイルス感染症は、子猫で発症しやすい感染症として知られています。とはいえ、成猫で発症しないということではありません。主な症状はヘルペスウイルスによるウイルス性鼻気管炎と似た、いわゆる「カゼ」症状がみられます。猫カリシウイルス単独での感染というより、先ほどのヘルペスウイルスとの混合感染であることが非常に多くのケースで確認されます。従って、主な症状としてくしゃみや鼻水をはじめ、多量の目やに、結膜炎がみられます。

呼吸の炎症は重症になると、間質性肺炎と呼ばれる肺そのものにも病変が及んでしまう場合がありますので注意が必要です。さらに、猫カリシウイルス感染症が他の猫カゼと異なる特徴的な症状として、口や舌に潰瘍を伴う炎症を作ります。口の中に強い痛みを伴うため、仮に食欲があったとしても食べ物を口にすることを嫌うこととなります。

さらに鼻詰まりも同時にみられることによって、においをかぎ分ける能力が低下します。人間では鼻が詰まると味覚が落ちて食欲がなくなることがあるように、猫でも同様に食欲が低下することがあります。その結果、本来子猫は十分に栄養を取り込まなければいけない時期であるにもかかわらず、食べることに不自由を感じ栄養不良状態を招き、回復に悪影響が生じるほか、衰弱する可能性も否定できません。この舌を中心に生じる潰瘍は複数の箇所に発生することがあり、肉眼で確認することが出来ます。口が痛いことによってよだれの量が増加します。

また、それ以外の特徴的な症状として関節炎があります。この症状がみられる機会は少ないのですが、上記のような症状に加えて歩き方がぎこちない仕草がみられた場合は猫カリシウイルスによる影響である可能性を考えます。

猫のカゼ症状の中でも特に口の中に生じる病変がはっきり表れているときは、猫カリシウイルスが関与していると想定して治療を行わなくてはなりません。

極めて重篤な症状を起こすとされる強毒全身性猫カリシウイルス(VS-FCV)の場合は、カゼ症状のほか頭部や足に潰瘍をもたらすほか、黄疸といった変化を生じ全身の衰弱を引き起こします。一般のカリシウイルス感染症と比べると致死率が非常に高く60%を超えるとされています。このVS-FCVは成猫で重篤になりやすい傾向があります。なお、強毒全身性猫カリシウイルスは、現在日本において発生報告例はありません。

そして、猫カリシウイルスに感染した場合は、症状が回復しても慢性の口内炎を発症するリスクが高くなります。猫の口内炎を発生させる要因はいくつかありますが、その一つとして今回の猫カリシウイルスも関与している可能性があるといわれており、将来にわたって歯茎や口の中の粘膜の炎症が出ないかチェックをしておく必要があるでしょう。

口内炎が痛そうな猫

カリシウイルス感染症の治療

猫カリシウイルスに特化したということではありませんが、ウイルスが関与しているカゼ症状に対し、インターフェロン療法がおこなわれています。インターフェロンはサイトカインと呼ばれる炎症や免疫の働きを調整するたんぱく質の一つで、ウイルスの増殖を抑制する作用があります。

これと並行して、症状そのものに対する治療も行っていきます。鼻水が多く出る場合には鼻の通りをよくするために去痰剤を使った治療、ウイルス性の感染症ではありますが、細菌の感染が認められる場合や、条件によって二次感染をおさえる目的として抗生物質を使用することもあります。

鼻の通りをよくするために、吸入療法と呼ばれる霧状になった薬を鼻を通じて吸い込む治療を行う場合があります。十分に食餌を摂ることが出来ない場合があり、栄養状態が悪化していることがあるかもしれません。その場合は水分バランスの改善や必要な栄養を与えるために点滴を行うことがあります。口の中が痛くて満足に食べることが出来ないので栄養価の高い柔らかいフードを強制給餌で与えるといった対策をとります。

また、猫の場合3日以上全く食物を摂取できない場合脂肪肝(肝リピドーシス)に至ることがありますので、重症の場合は経鼻チューブを使って流動食を与えることもあります。このように原因に対するお薬を使った治療を行うのに合わせて体力の低下を防ぐために強制給餌や水分供給に注意を払って治療を行います。

猫カリシウイルス感染症の予防と対策

猫カリシウイルス感染症に対しどのような対策がとれるのでしょうか?現在日本では、猫カリシウイルスに対するワクチンの接種を受けることが出来ます。このワクチン接種は適切な時期に必要とされる接種を行う必要があります。また、その猫が生活する環境、同居猫の有無などによって追加接種をの間隔を獣医師と決めていきます。猫カリシウイルスには非常に多くの株があるため、ワクチンを接種しても感染する可能性が完全に排除されるわけではありません。ただし、発症し重症化するリスクを軽減できることが期待できるため、定期的な接種を推奨します。

この猫カリシウイルス感染症は、日本国内では多頭飼育の子猫でより発症しやすい条件となっています。もともと、この時期は母猫から母乳を通じて得た「母子免疫」が徐々に低下して、外部からの病原体に対して幾分抵抗力が落ちる時期と重なります。通常、この時期にワクチン接種を開始するのですが、このタイミングで猫カリシウイルスにできるだけ接触する機会を減らしてあげることが出来れば、より望ましい条件となります。また、感染が疑わしい猫との接触を極力避け、猫にとって過ごしやすい住環境を整えてあげることが重要です。食餌に関しても、子猫の場合は十分な栄養が摂れるように気を配ってあげましょう。

では、これまでに猫カリシウイルス感染症に罹ってしまったことのある猫には今後どんな対策をとることが出来るでしょうか?

まず、ワクチン接種は症状が十分に回復したうえで接種のタイミングを獣医師と相談の上決定していきます。再発リスクを完全に防げるということではありませんが、感染しても比較的症状を軽減できる可能性があります。また、猫カリシウイルスが関与しているといわれる慢性口内炎の発生リスクを少しでも抑制する対策をとっていきます。

ワクチン接種のほか、過去に感染したことのない猫も同様に病原体に対して体を防衛する方法を日頃からとっておくとよいでしょう。ケージや生活環境を清潔に保つことや、栄養バランスの整ったフードを与えること、獣医師による定期健診のほか、免疫力補助としてサプリメントを服用することも方法と一つとなります。とりわけ、猫の口内炎に発展すると猫自身が気持ちよくものを食べることが困難になることがあります。また、治療も長期にわたることがありますので、猫カリシウイルス感染症への対策だけでなく口内炎への備えとしても一定の免疫力を保ち、感染症になりにくい環境を整えてあげましょう。

執筆者

増田国充先生
獣医師、ますだ動物クリニック院長

経歴
2001年北里大学獣医学部獣医学科卒業、獣医師免許取得
2001~2007 名古屋市、および静岡県内の動物病院で勤務
2007年ますだ動物クリニック開院

所属学術団体
比較統合医療学会、日本獣医がん学会、日本獣医循環器学会、日本獣医再生医療学会、(公社)静岡県獣医師会、災害動物医療研究会認定VMAT、日本メディカルアロマテラピー協会認定アニマルアロマテラピスト、日本ペットマッサージ協会理事、ペット薬膳国際協会理事、日本伝統獣医学会主催第4回小動物臨床鍼灸学コース修了、専門学校ルネサンス・ペット・アカデミー非常勤講師、JTCVM国際中獣医学院日本校認定講師兼事務局長、JPCM日本ペット中医学研究会認定中医学アドバイザー、AHIOアニマル国際ハーブボール協会顧問、中国伝統獣医学国際培訓研究センター客員研究員

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