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春に注意したい猫の病気対策

獣医師執筆

猫の春

森のいぬねこ病院グループ院長

日本獣医学会、動物臨床医学会、獣医がん学会所属

西原 克明(にしはら かつあき)先生

 

春になると気温の上昇とともに、猫の活動も活発になります。また、この時期に見られる病気もあるため、猫が元気で長く暮らすためには、色々と注意してあげたいことがあります。今回は春の季節に気をつけてあげたい猫の病気や健康管理についてお伝えします。

猫にもあるの?花粉症やアレルギーについて

猫も人間と同じように、アレルギーが比較的多くみられる動物ですが、ほとんどの猫は、季節に関係なくかゆみや脱毛を起こします。しかし、猫の中には明らかに春になると目の周りやお腹周辺を痒がるようになるケース、あるいは年中見られるアレルギー症状が、特に春に症状が悪化するケースがあり、春の季節はアレルギーを持つ猫は注意が必要です。

 

季節的なアレルギーでは、目の周りや耳を掻いたり、お腹や手足をよく舐めるような仕草が多く見られます。そのため、目や耳の周りが傷ついていたり、あるいは目や耳、お腹や手足など、症状が見られる部位の毛が薄くなっていたり、ポツポツの皮膚に湿疹が見られるようになります。

 

このようなアレルギー症状は、猫にとって辛いもののため、まずはかゆみ止めなどのお薬を使って治療することをお勧めします。猫の場合、アレルギーに対してはステロイドを使うことも多いのですが、ステロイドは正しい使い方をして、長期間使わなければ、決して怖い薬ではありません。ですので、猫が痒みに苦しんでいるときは、薬の副作用よりも、まずはかゆみの症状をきちんと改善させることを優先しましょう。

 

とは言っても、これらの治療はあくまで対症療法であり、アレルギーを治しているわけではありません。残念ながら、アレルギーは完治できない病気ですので、基本的には一生の治療が必要です。お薬はもちろん、キャットフードやサプリメントを取り入れることで、よりアレルギー症状を軽減させたり、ステロイドの使用量を減らすこともできますので、かかりつけの獣医師に相談しながら、その猫にとって一番良い方法を選択していただければと思います。

 

また、猫のアレルギーによる皮膚炎は、ノミのアレルギーが関係していることが多く、アレルギーと付き合う中で、ノミの予防は必須ですので、必ず実施してあげるようにしましょう。

 

春は外がとにかく危険!猫を外に出してはいけない理由

猫

近年は、猫の完全室内飼育をして、外に出ないで暮らす猫も多くなりました。しかし現実にはまだまだ外に出る猫が多いのも事実。春になって暖かくなると、外に出る猫にとっては、いろんなアクシデントが起こる可能性がありますので注意が必要です。

 

可能であれば、室内で十分な運動ができるような環境を整えて、おうちの中で暮らせるようにしてあげてください。ここでは、外に出る猫にとって脅威となる病気や事故などについてお伝えします。

 

◆マダニ感染

暖かくなると、マダニの活動が活発になり、外に出る猫では、寄生される可能性が非常に高くなります。マダニに咬まれると皮膚炎を起こすだけでなく、マダニから感染する猫ヘモプラズマ感染症という病気にかかることもあります。さらには人間にも感染する病気を持つこともあるため注意が必要です。

 

マダニは、予防薬を使うことで感染を防ぐことができます。マダニだけでなくマダニが媒介する厄介な病気を防ぐためにも、予防は必ず実施してあげてください。なお、予防薬はペットショップやホームセンターで売っているものは、効果が不安定なものが多いため、動物病院で処方されるものを使うようにしてください。

 

◆ノミ感染

ノミは13℃以上の環境であれば生きていけますので、冬でも猫の体に寄生して過ごしています。春になると、外で暮らす野良猫の活動も活発になりますので、外に出る猫が野良猫と接触する機会も増え、容易にノミに感染してしまいます。

 

前述のとおり、アレルギーを持つ猫では、ノミに対するアレルギーを持つことが多いため、痒がるだけでなく、腰からお尻にかけて皮膚炎を起こすようになります。また、瓜実条虫(サナダムシ)という寄生虫に感染する可能性もあります。さらにはマダニと同じように、人間にも感染する病気にかかることもあるため、やはりノミもしっかりと予防する必要があります。

 

ノミの予防薬は、ほとんどがマダニと一緒に予防できるタイプですので、一つの予防薬でノミとマダニが予防できますから、非常に手軽に実施することができます。

 

ちなみに、ノミは一度お家に入り込むと駆除するのが非常に難しくなります。ノミについては、寄生してから治療するのではなく、とにかく予防することを心がけてください。

 

◆フィラリア症

フィラリア症と言えば、多くの方が犬の病気だと思われるようですが、実は猫でも見られる病気です。しかも猫のフィラリア症は、少数のフィラリア成虫の寄生で、重度な症状を引き起こすため、非常に厄介な病気です。

 

猫のフィラリア症は、犬と同じようにフィラリア幼虫を持つ蚊に刺されることで感染するため、多くの地域では蚊が発生する春以降、感染リスクが高くなります。さらには猫のフィラリア症は診断が難しく、猫が亡くなってから感染がわかるケースが多いため、予防が非常に重要になります。今のところ、犬ほど感染率は高くないようですが、全国で見られるため、やはり予防はしっかりと行ってあげてください。

 

◆ウイルス感染

外で暮らす野良猫はノミだけでなく、様々なウイルスを持っていることが多く、猫免疫不全ウイルス(猫エイズウイルス)や猫伝染性鼻気管炎ウイルス、猫カリシウイルスなどが問題になります。これらはワクチンで予防することもできますが、完全な予防は難しく、しっかりとワクチンを受けていても、感染することがあるため、注意が必要です。

 

猫伝染性鼻気管炎猫カリシウイルスは、感染すると数日の潜伏期間のあと、主に目の結膜炎や鼻炎、口内炎といった症状が見られるようになります。その一方で猫エイズウイルスは一時的な発熱などはあっても、そのあとしばらくは何の症状も示さず、感染に気づかないことも多くあります。そのため、外に出る猫は、ワクチン接種はもちろん、定期的に猫エイズウイルスの検査を受けるようにしましょう。

 

◆ケンカ(咬傷)

ケンカもやはり野良猫が活動的になる春先に多くみられます。猫は、なわばり意識の強い動物ですので、普段はお家で過ごす猫が外に出ると、野良猫のなわばりを荒らすことになり、ケンカのきっかけになってしまいます。ケンカでは咬み傷や引っ掻き傷によるケガはもちろん、野良猫が猫エイズウイルスを持っている場合は、猫エイズに感染してしまうリスクも高くなります。

 

また、ケンカでできた傷は、数日してから化膿して腫れ上が理、重症化することもあるため、少しでもケンカの形跡がある場合には、積極的に治療することをお勧めします。

 

◆交通事故

外に出る猫で最も危険なものが交通事故です。特に自動車による交通事故では死亡する確率もかなり高く、絶対に避けたいところです。やはり春になって活動的になると、交通事故にあうリスクも高くなります。交通事故に関しては、確実な予防方法は一つ、完全室内飼育だけです。厄介な交通事故を防ぐためにも、できる限り猫は室内で暮らせるようにしてあげましょう。

 

◆妊娠

妊娠はもちろん病気ではありません。しかし猫の場合、望まない妊娠および出産は人間社会では大きな問題となります。不妊手術を受けていない猫が外に出ると、交配する可能性が非常に高く、さらには雌犬のように年に2回の発情ではなく、雌猫の発情は数週間〜数ヶ月ごと周期に見られるため、それだけ交配する機会も増えることになります。

 

そのため、猫が活動的になる春以降は、望まない交配を避けるためにも、外に出さないようにしてあげてください。また、どうしても外に出てしまう場合は、不妊手術を検討することをお勧めします。

 

春になったら注意したい猫の病気のまとめ

春になると人間と同じようにアレルギーを持つ猫の症状が悪化することがあります。さらには多くの猫は活動的になり、外に出ることで様々な病気や事故にあうリスクが高くなってしまいます。

 

これらの危険を少しでも減らすために、予防接種(混合ワクチン)、ノミとマダニの予防、フィラリア予防を確実に行い、さらには完全室内飼育ができるように、お家の環境を整えてあげてください。

 

執筆者

西原先生

西原 克明(にしはら かつあき)先生

 

森のいぬねこ病院グループ院長

帯広畜産大学 獣医学科卒業

 

略歴

北海道、宮城、神奈川など様々な動物病院の勤務、大学での研修医を経て、2013年に森のいぬねこ病院を開院。現在は2病院の院長を務める。大学卒業以来、犬猫の獣医師一筋。

 

所属学会

日本獣医学会、動物臨床医学会、獣医がん学会、獣医麻酔外科学会、獣医神経病学会、獣医再生医療学会、ペット栄養学会、日本腸内細菌学会

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著者⼀覧 Author

  • 森のいぬねこ病院グループ 院長

    西原克明先生

    獣医師

  • 増田国充先生

    増田国充先生

    獣医師

  • 大谷幸代先生

    愛玩動物飼養管理士

    青山ケンネルスクール認定A級トリマー

    メディカルトリマー

  • 山之内さゆり先生

    動物看護士・トリマー

  • 國澤莉沙先生

    愛玩動物飼養管理1級

    ホームドッグトレーナー1級

    小動物看護士他

  • 大柴淑子先生

    動物看護士(元)

    ペットアドバイザー