ワンちゃん・ネコちゃん相談室 Consultation room

ワンちゃん・ネコちゃん相談室

脱毛やトイレトラブルの原因となる猫のストレス対策について

獣医師執筆

猫のストレス対策について

森のいぬねこ病院グループ院長

日本獣医学会、動物臨床医学会、獣医がん学会所属

西原 克明(にしはら かつあき)先生

 

猫も人と同じように『ストレス』があり、中にはストレスによって病気が悪化してしまうケースもあります。特に猫のストレスは、猫自身の性質も影響しますので、一見、人間の感覚ではストレスに気づきづらいことも多々あります。
そこで今回は、猫のストレスとその対策についてお伝えします。

 

そもそもストレスの定義は?

一般的に私たち人間のストレスといえば、「友人関係の悩みがある」とか「会社勤めが辛い」というような精神的なストレスや社会的なストレスがイメージされると思います。しかし、ストレスとは元々はもっと広い意味で使われていて、厚生労働省のホームページによれば、

 

「医学や心理学の領域では、こころや体にかかる外部からの刺激をストレッサーと言い、ストレッサーに適応しようとして、こころや体に生じたさまざまな反応をストレス反応と言います。

私たちのこころや体に影響を及ぼすストレッサーには、「物理的ストレッサー」(暑さや寒さ、騒音や混雑など)、「化学的ストレッサー」(公害物質、薬物、酸素欠乏・過剰、一酸化炭素など)、「心理・社会的ストレッサー」(人間関係や仕事上の問題、家庭の問題など)があります。」

と記載されています。

つまり、精神的なストレスだけでなく、物理的あるいは化学的、つまりは身体的なストレスもあって、猫の場合は、それらを全て含めてストレスと定義している場合がほとんどです。

 

 

猫のストレスとは?

猫のストレスには、大きく分けると、病気や怪我・出産などによる身体的なストレスと、多頭飼育など環境要因によるストレスが見られます。
また、猫がストレスを受けた結果、身体的な変化や行動的な変化が見らたら、私たちは、その猫にストレスがあることに気づけますが、そのような見た目の変化がない場合、猫にストレスがかかっているかどうかを見抜くのは実際には難しく、見逃しがちになります。

 

例えば、高齢の猫のほとんどが何かしら関節に問題を持っていることがわかっています。しかし、実際に足を痛がったり、上げて歩いたりするような仕草はほとんど見られず、一見すると少しおとなしくなった程度で、飼い主の方も「年をとったのかな」くらいにしか思えないことがあります。
しかし、そういった猫に、痛み止めや炎症をケアするサプリメントを使用すると、動きがかなり良くなり、活発さを取り戻すことが多く、実は痛み(=ストレス)が隠れていたことがわかるのです。

このように、一見すると何の症状もない猫が、実は身体的なストレスを抱えていた、という場合は多々あり、飼い主の方が見逃しているケースが少なくないと考えられています。

 

 

猫にストレスがかかるのはどんな時?

一方、病気や怪我以外で、猫がストレスを受けやすい状況は、どんな場合があるでしょうか。

一般的には、猫は単独行動を好む動物ですので、自分のテリトリー(縄張り)に、他の動物が入ってくると、本能的に警戒心が高まりストレスになるようです。そのため多頭飼育のお家では、日常的に自分のテリトリーに他の猫がいる状況にあるので、ストレスを感じやすい傾向にあるようです。

もちろん、2頭だけであっても、相性が良くなければ、やはりストレスになることがあります。また、猫同士だけでなく、犬など他の動物、あるいは来客などに対して、やはり自分のテリトリーに入られるとストレスを感じやすいようです。

 

また、隣の家が工事をしているなどの騒音や、外で暮らす猫の存在など、自宅の周辺環境によってもストレスを受けることがあります。さらには、自宅の中でも掃除機の音や香水などの苦手な匂い、さらには不衛生なトイレ、あるいは過剰なスキンシップなど、猫の五感で苦手なものがあると、やはりストレスとなってしまいます。

さらには逆に自分のテリトリーを出る、つまり外に連れ出されることが、猫にとってはストレスになることが多いです。もちろん、外で暮らす猫にとっては、一定の範囲内がテリトリーになりますが、普段室内で暮らす猫にとっては、お家の中がテリトリーなので、そこから出るということは、どうしても警戒心が強くなり、それがストレスとなるようです。

 

 

猫がストレスを感じている時の仕草や行動について

猫がストレスを感じると、行動的な変化が見られることがあります。
もっとも多いのが、過剰な毛づくろいです。猫はストレスを感じると、毛づくろいを行うことでストレスを避けようとします。他のことに集中することで気を紛らわせようとしているイメージですが、しかしその毛づくろいが過剰になると、舐めている場所が脱毛したり、さらにひどくなると皮膚炎を起こすことがあります。

また、舐める場所は様々ですが、手足やお腹周りに脱毛が見られることが多いです。他には、本来のトイレ以外の場所で排泄をすることがあります。一見すると雄猫のスプレー行動に似ているように感じます。これは、ストレスを感じた猫が、自分のテリトリー内を自分の匂いで満たそうとする行動だと考えられています。
また、自分で自分の尻尾をかじったりする仕草が見られることもあります。

これらの仕草や行動は、ストレス以外が原因で見られることもあります。また、これらの行動が見られないからといって、ストレスがないと決めつけることはできませんので注意が必要です。個人的には、猫がストレスを感じているときにもっとも見られる行動は『じっとして動かない』ことだと思います。もちろん、ストレスがなくてもじっとしていることがあるため、見た目での判断は非常に難しのですが。。。

 

 

猫のストレスが病気を引き起こすことも?

猫の病気の中には、ストレスが原因あるいは悪化要因と考えられているものもあります。

猫の特発性膀胱炎は、頻尿(トイレに何回も行くが、わずかしか尿が出ない)、血尿、痛みのある排尿などの症状が見られる病気で、はっきりした原因がわかっておらず、その一つにストレスが大きく関わっているのでは、と言われています。

一般的な膀胱炎の治療で、一時的に改善するものの、再発を繰り返すことが多く、大体はストレス管理によって徐々に改善していきます。今では、療法食にもストレスをケアするものもあり、個人的には一定の効果が見られていると感じています。

また、猫伝染性腹膜炎もストレスが関係していると考えられています。この病気は、猫伝染性腹膜炎ウイルスによる感染症ですが、多頭飼育の環境で見られることが多いと思われます。猫伝染性腹膜炎ウイルスは、猫コロナウイルスが突然変異したものですが、猫コロナウイルスは多くの猫で見られるもので、通常は何の症状も引き起こしません。

しかし、突然変異によって猫伝染性腹膜炎ウイルスに変異し、発症してしまうと、様々な症状が見られるようになります。
この突然変異の要因にストレスが関係しているのでは、と考えられています。

 

 

猫のストレス対策

猫にストレスが見られる場合、その原因を見極め、根本的に解決することが最も理想的な対策になります。
病気によるストレスは、もちろんその病気を完治させることになります。また、多頭飼育や相性の悪い猫の同居といったことが原因のストレスであれば、やはり環境を改善してあげることが必要になります。

また、根本的なストレス対策以外には、個人的な経験ですが、免疫力を高めるサプリメントが役立つように感じています。例えば、キングアガリクスのような高品質なサプリメントを使うことで、ストレスへの抵抗力が高まり、多少のストレスに対しても元気に過ごせているように思います。他にもストレスを軽減するようなフェロモン製剤や、リラックスサプリメントなどもありますので、色々試してみるのも良いでしょう。

 

サプリメントは、残念ながら、医薬品のように「必ずこの効果が見られます」というものではなく、どの猫にも同じような効果が期待できるわけではありません。しかし、色々試したり、あるいは組み合わせることによって、安全に猫のストレスをケアできますので、ぜひ取り入れていただきたいと思います。特に多頭飼育によるストレスなど、環境的な問題解決が難しいようなケースでは、積極的に使ってあげたいところです。

 

まとめ

猫にも様々なストレスがあり、病気や出産などによる身体的なストレスや、多頭飼育などの環境的なストレスがよく見られます。
猫がストレスを感じると、手を舐め続けたり、やたらと毛づくろいをする仕草が目立つようになります。しかし、中には特定の行動をせず、じっとしているだけの猫もいます。

ストレスに対する管理は、基本的にはその原因を特定して、根本原因を改善することが重要です。しかし、中には原因がよくわからないケースや、環境的に改善が難しいケースも多いため、そういったときには、ストレスケアが期待できるサプリメントやキャットフードなどを取り入れてみても良いかもしれません。

 

 

執筆者

西原先生

西原 克明(にしはら かつあき)先生

 

森のいぬねこ病院グループ院長

帯広畜産大学 獣医学科卒業

 

略歴

北海道、宮城、神奈川など様々な動物病院の勤務、大学での研修医を経て、2013年に森のいぬねこ病院を開院。現在は2病院の院長を務める。大学卒業以来、犬猫の獣医師一筋。

 

所属学会

日本獣医学会、動物臨床医学会、獣医がん学会、獣医麻酔外科学会、獣医神経病学会、獣医再生医療学会、ペット栄養学会、日本腸内細菌学会

カテゴリー Category

著者⼀覧 Author

  • 森のいぬねこ病院グループ 院長

    西原克明先生

    獣医師

  • 増田国充先生

    増田国充先生

    獣医師

  • 大谷幸代先生

    愛玩動物飼養管理士

    青山ケンネルスクール認定A級トリマー

    メディカルトリマー

  • 山之内さゆり先生

    動物看護士・トリマー

  • 國澤莉沙先生

    愛玩動物飼養管理1級

    ホームドッグトレーナー1級

    小動物看護士他

  • 大柴淑子先生

    動物看護士(元)

    ペットアドバイザー