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獣医師が教えるドッグフードの選び方(ドライ、ウェットや総合栄養食、療養食の違いなど)

獣医師執筆

獣医師が教えるドッグフードの選び方

森のいぬねこ病院グループ院長

日本獣医学会、動物臨床医学会、獣医がん学会所属

西原 克明(にしはら かつあき)先生

ドッグフードは今や膨大な種類がペットショップやホームセンターで販売され、さらには動物病院の療法食など、特殊なものもあります。しかし、ドッグフードの中には、犬の栄養バランスに適さない「おやつ」として販売されているものや、使う場面を間違えるとかえって犬の健康に悪影響を与えるものもあります。さらに近年では、高品質な原材料やいわゆる「スーパーフード」と呼ばれる栄養学的に優れた原材料を用いた「プレミアムドッグフード」も多く見かけるようになりました。

そこで今回は、ドッグフードの選び方について整理してまいります。

 

犬のフードにはどんな種類があるの?(形状分類、目的分類、フード以外:手作り)

ドッグフードには実にたくさんの種類がありますが、一般的には2つの分類方法が用いられています。

形状による分類

ドッグフードは、その形状によって、ドライフード、ウェットフード、セミモイストタイプ(ソフトタイプ)に分けることができます。

ドライフード

いわゆる「カリカリごはん」と呼ばれている、乾燥した固形粒のドッグフードです。今の人と暮らす犬のほとんどは、このドライフードを食べています。
ドライフードは、水分をギリギリまで減らすことで、カビの発生を抑え、保存性を高めることができますので、長期保存ができ、さらにはそのまま与えることができるため、経済性と利便性を兼ね備えたドッグフードと言えます。また、栄養設計が容易で、犬の栄養バランスを整えた『総合栄養食』、つまりそのドッグフードとお水だけで、犬の健康を維持できるものが多くあり、手軽に犬の栄養管理を行うことができます。

ウェットフード

缶詰やレトルトパウチタイプのドッグフードはウェットフードと呼ばれています。ドライフードと逆に、私たち人間が普段食べるものと同じように、水分たっぷりのドッグフードになっています。ドライフードに比べて消化性が良いものが多く、またドライフードよりもウェットフードを好む犬も多いと言われています。ウェットフードは、総合栄養食だけでなく、ドライフードにトッピングするおやつタイプのもの多いため、購入するときにはしっかりとチェックする必要があります。また、一般的にはドライフードよりも高価なものが多いです。

セミモイストタイプ

セミモイストタイプのドッグフードは、ドライフードの水分含量を増やしたもので、ドライフードよりもしっとりとした食感が特徴です。そのため、硬いドライフードよりも食べやすいという印象で、好んで食べさせる飼い主の方が多いように感じています。
セミモイストタイプは、水分含量が多く、その分微生物の繁殖を抑えるために、防腐剤や保存料などを使用しています。また、セミモイストタイプは、製造過程で発泡処理がされていませんが、同じ水分量のドッグフードで、発泡処理されたものは「ソフトタイプ」と呼ばれます。

 

目的による分類

総合栄養食

犬の主食として与えることができるドッグフードです。総合栄養食は、それとお水だけで犬が生きていく上での栄養素を満たすように設計されており、ペットとして暮らしている犬の主食となっています。
最近では、総合栄養食の中でも、原材料の品質にこだわったものや、総合栄養食の基準だけでなく、より犬の健康に役立つ成分を取り入れたドッグフードも多く見られ、「プレミアムドッグフード」として、品質にこだわる飼い主の方に好まれています。

間食

間食には、主におやつとして与えられるものが含まれます。間食は、総合栄養食と異なり、犬の栄養バランスは考慮されていませんので、主食にすることができません。飼い主と犬とのコミュニケーションツールとして、あるいはしつけやトレーニングのおやつとして用いられています。

その他の目的食

総合栄養食のトッピングとして用いられたり、あるいは特定の栄養成分を補うために作られたものが含まれます。

療法食

動物病院で処方されるドッグフードで、特定の病気の治療あるいは管理に用いられるドッグフードです。

 

主食はドライまたはウェットの総合栄養食を

上記のように、大まかな分類でもたくさんの種類のドッグフードがありますが、主食にするドッグフードは、何はともあれ『総合栄養食』を選ぶようにしてください。また、特定の病気などで動物病院から療法食を勧められている場合は、それに従ってください。

また、ドッグフードの形状ですが、基本的にはドライフードもしくはウェットフードをお勧めしています。セミモイストタイプやソフトタイプのドッグフードは、水分を保持させるための防腐剤などが含まれており、不要な添加物を摂取することになります。

また、筆者個人の経験ですが、健康診断で肝臓に異常を認めた犬が、主食をソフトタイプからドライフードに切り替えただけで改善したケースがいくつかあり、その点からもセミモイストタイプやソフトタイプのフードはお勧めしていません。

犬 食事

 

ドライフードとウェットフードはそれぞれメリットデメリットが

では、総合栄養食のドライフードとウェットフードではどちらが良いのでしょうか?実はそれぞれにメリットとデメリットがありますので、それらを比べて、ご自身の考え方に合うものを選んであげると良いでしょう。

ドライフードのメリットは、何と言ってもその手軽さです。保存性に優れていますし、基本的にはドライフードとお水を与えるだけで良いので、食事の準備の手間がかかりません。また、硬さがあるため、たいていの犬ではしっかりと噛み砕いて食べますので、良い咀嚼運動にもなります。

その一方で、保存性に優れている分、酸化防止剤など一定の添加物が必ず必要になります。また、他のドッグフードに比べると消化性が劣るというデメリットがありますので、お腹が弱い犬の中には、なかなかドライフードでは状態が改善しないケースもあります。

一方で、ウェットフードは、ドライフードと比較して消化性が良く、また食事と一緒に水分もしっかりと摂ることができます。また、一般的にドライフードよりも好んで食べる犬が多いと言われています。

その一方で、ドライフードと比較して高コストになる点と、口の中に食物残渣が残りやすく、歯周病のリスクが高くなるというデメリットがあります。

 

4Dミートやレンダリングは過去のもの?

 

ドッグフードは以前は、4Dミートやレンダリングミートと呼ばれる非常に粗悪な原材料が使われていることが指摘されていました。ペットフードの歴史として、人間用の食品製造で出てきた廃棄物を有効利用するという側面もあったため、そのような懸念が目立っていました。

しかし、現在のペットフードに関する法律(愛がん動物用飼料の安全性の確保に関する法律(ペットフード安全法))では、そのような劣悪な原材料の使用を禁止しています。また罰則も厳しいことから、現在のドッグフードにおいては、品質が著しく劣る原材料を使用している可能性は極めて低いと考えられています。

しかし、その一方で、完全に安全性が担保されているかはまだまだはっきりしないところもあります。例えば、アメリカのFood and Drug Administration (FDA)と呼ばれる組織では、ペットフードのリコールを公表しています(https://www.fda.gov/animal-veterinary/safety-health/recalls-withdrawals)。そこでは日本に輸出しているペットフードがリコール対象となっているケースもありますので、気になる方は時々チェックすることをお勧めします。

さらには、ある報告では、市販されているドッグフードの原材料を精査したところ、ドッグフードのラベルには記載されいな原材料が検出されるものもあるとのこと。おそらく、ドッグフードを製造する過程で混入したものと考えられていますが、そのような品質管理では、やはり十分安全とは言えないところもあります。

したがって、アレルギーを持っていて、より厳密な食材の制限が必要な場合は、市販のものでなく、療法食などより精密に管理されているドッグフードを選ぶと良いでしょう。

 

 

プレミアムドッグフードは本当に健康に良いのか?

近年、より品質の高い原材料を用いたり、機能性成分を添加したいわゆる「プレミアムドッグフード」と呼ばれるものが数多くみられます。また、製法についても通常の高温で製造する方法だけでなく、低温加工、あるいはフリーズドライ加工で作られ、熱による栄養成分の喪失を抑えたドッグフードも販売されています。さらには、草食動物を骨や血液なども含めた状態で加工・冷凍し、犬の祖先が本来食べていたであろう食事を、「生食」として販売されているドッグフードもあります。

このようなプレミアムフードについては、明らかに犬の健康に有益かどうかを示す科学的な根拠がありません。したがって、現段階ではプレミアムドッグフードの有益性については、イメージが先行していると言わざるを得ません。

しかし、筆者の経験では、確かにプレミアムドッグフードに変更するだけで犬の健康状態が改善するケースはあります。ただし、そのような効果は個体差が大きく、一概にどのプレミアムフードがより優れているかを比較することもできず、今後の検証が待たれるところです。
しかしその一方で、プレミアムフードの中には、製造上の品質管理が不十分なものもあるため注意が必要です。

 

ペットフードはまだまだ開発途上  (添加物と病気、同スペックでも変化あり・・・)

前述のとおり、ドッグフードの安全性に関しては、まだまだ改良の余地があります。さらには、栄養学的な面でもドッグフードはまだ発展途上にあると考えられます。

例えば、最近の研究では、動物の腸内細菌と健康の関係が次々と明らかにされていますが、その中で添加物が腸内細菌に影響を与えることがわかっています。そして、ドッグフードではその利便性や経済性の点からは添加物は必須で、その摂取を避けることはできません。ただし、今の段階では、その辺りの犬の健康への影響はまだわかっていません。

また、実際に筆者の経験として、同じようなスペックのドッグフードを与えたにも関わらず、製品によって毛艶や便の状態に変化が見られることがありますが、これも厳密なメカニズムはわかっていません。このように、現在の犬の栄養学でははっきりしない事象もありますので、ドッグフードはまだまだ発展途上の食べ物だと言えます。

また、これは筆者の個人的な経験によるものですが、ドッグフードの中でも、着色料や香料など不要な添加物を使用していないものの方が、犬の健康状態をよく保てるものが多いと考えています。

さらには、穀物不使用のいわゆるグレインフリーのドッグフードが良いとか、動物性タンパク質の原材料が最初に表記されているものが良いというような情報もありますが、今のところ、グレインフリーのドッグフードが優れているという科学的な根拠はありませんし、中にはグレインフリーのドッグフードによって心臓病が引き起こされたという報告もあります。

また、動物性タンパク質については、「犬は肉食に近い動物なので、動物性タンパク質が豊富なドッグフードの方が良い」という考え方に基づいていますが、必ずしも動物性タンパク質が始めにに表記されているからといって、実際に動物性タンパク質が豊富とは限りませんので、注意が必要です。

 

実際に食べさせた時の体調チェックが重要

以上より、現在での健康な犬に対するドッグフードの選び方については、
・総合栄養食のドライフードあるいはウェットフード
・不要な添加物を使用していない
という2点をお勧めしています。

しかし、実際はそれだけでは不十分なこともあり、結局は食べさせてみないとわからない、というのが正直なところです。良いドッグフードであれば、やはり毛艶は良くなりますし、便の臭いも少なく、比較的量も少なめになります。

したがって、ドッグフードを選ぶときには、上記の2点に加え、
・実際に食べさせて、被毛や便などを目安に、健康な状態を維持できるものを選ぶ
という点も非常に重要になります。

 

ドッグフードの選び方まとめ

ドッグフードには様々な種類があるが、主食には添加物のできるだけ少ない総合栄養食を選ぶことが重要です。

ドッグフードは、犬の栄養学に基づき設計された非常に優れた食べ物ですが、いまだに発展途上にあるため、製品情報だけを確認するのではなく、実際に食べさせてからの評価がより重要です。

 

執筆者

西原先生

西原 克明(にしはら かつあき)先生

 

森のいぬねこ病院グループ院長

帯広畜産大学 獣医学科卒業

 

略歴

北海道、宮城、神奈川など様々な動物病院の勤務、大学での研修医を経て、2013年に森のいぬねこ病院を開院。現在は2病院の院長を務める。大学卒業以来、犬猫の獣医師一筋。

 

所属学会

日本獣医学会、動物臨床医学会、獣医がん学会、獣医麻酔外科学会、獣医神経病学会、獣医再生医療学会、ペット栄養学会、日本腸内細菌学会

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著者⼀覧 Author

  • 森のいぬねこ病院グループ 院長

    西原克明先生

    獣医師

  • 増田国充先生

    増田国充先生

    獣医師

  • 大谷幸代先生

    愛玩動物飼養管理士

    青山ケンネルスクール認定A級トリマー

    メディカルトリマー

  • 山之内さゆり先生

    動物看護士・トリマー

  • 國澤莉沙先生

    愛玩動物飼養管理1級

    ホームドッグトレーナー1級

    小動物看護士他

  • 大柴淑子先生

    動物看護士(元)

    ペットアドバイザー