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キャットフードの選ぶ時の4つのポイント~猫専用がおすすめ

獣医師執筆

 

森のいぬねこ病院グループ院長

日本獣医学会、動物臨床医学会、獣医がん学会所属

西原 克明(にしはら かつあき)先生

 

猫の生活の中で欠かせないのがキャットフード。猫は完全な肉食動物のため、本来なら他の動物を獲物として捕まえ、食べ物にする生き物ですが、人間との生活においては、キャットフードがその代わりとなります。そのため、猫の健康管理には良いキャットフード選びが欠かせません。
そこで今回はキャットフードの選び方についてお伝えします。

 

何はともあれ『総合栄養食』を

キャットフードを選ぶとき、大前提となるのが『総合栄養食』という表記がされているキャットフードを選ぶということです。
キャットフードには実は様々な種類があり、総合栄養食の他にも、『間食』や『その他の目的食』などがあります。

その中で、主食として栄養学的にバランスが取れているキャットフードが総合栄養食なのです。そのため、主食のキャットフードを選ぶとき、原材料の品質や添加物の有無などにこだわることも重要ですが、必ず『総合栄養食』を選ぶようにしてください。

特に缶詰やレトルトパウチタイプのキャットフード、いわゆるウェットフードは、総合栄養食ではないものも多いため、実際に購入するときには間違えないように注意する必要があります。

犬と猫は違う動物!猫には猫専用のフードを

今でこそドッグフードもキャットフードもたくさんの種類が販売されるようになり、ほとんどの方は犬にはドッグフードを、そして猫にはキャットフードを食べさせています。しかし、このドッグフードとキャットフードの違いについて、あなたはご存知でしょうか?

簡単にいうと、犬は肉食よりの雑食動物なのですが、猫は100%肉食動物なのです。そのため、もともと食べていたものが大きく違うため、犬と同じものを食べていると栄養バランスを崩して病気になってしまいます。

例えば、タウリンという栄養成分ですが、これは魚介類をはじめ、動物に多く含まれており、猫にとっては非常に重要な栄養成分になります。しかし、ドッグフードは動物性の原材料と一緒に、植物性原材料も多く含まれており、実は植物性原材料のほとんどにはタウリンは含まれていないのです。そのため、猫にとってドッグフードはタウリンが少ない食べ物であり、それを食べ続けると体調不良を引き起こしてしまいます。

総合栄養食では、このように猫の栄養バランスが崩れないよう、タウリンをはじめ様々な栄養成分について、しっかりとした設計がなされています。

ちなみに、100%肉食動物の猫は、犬と比べて動物性原材料、つまりはお肉をたくさん必要とするのですが、動物性原材料の方が植物性原材料よりもコストがかかるため、同じ量のフードでも、ドッグフードよりもキャットフードの方が高価になります。

 

総合栄養食の原材料ラベルのカラクリにご用心!?

ペットフードの原材料においては、少しでもコストダウンを図るためには植物性原材料をうまく使用する必要があります。しかし、前述のように、猫にとっては動物性原材料が豊富なキャットフードの方がよりナチュラルな栄養バランスになるため、キャットフードにこだわりを持っている方は、より動物性原材料の多いキャットフードを好みます。

では、キャットフードの中でもより動物性原材料の多いものを選ぶにはどうすれば良いのでしょうか。実は、キャットフードの中でも主食となる『総合栄養食』には、使用している原材料全てを記載する義務があるのですが、その記載する順序のルールとして、「使用量の多い順に記載する」ことが決められています。したがって、チキンやビーフなど動物性原材料が最初に書かれてあるキャットフードであれば、一見、動物性原材料を豊富に使用しているものと思われます。

しかし、この原材料表記をチェックする時には注意が必要です。実は植物性原材料の成分をさらに細かく分けると、一見すると一つ一つの原材料としては少なくなるため、記載順序としては動物性原材料よりも後ろに記載することができるようになります。しかし、キャットフードのラベルに記載されている原材料をチェックすると、動物性原材料が最初に書かれていても、そのあとに記載されている植物性原材料を全て合わせると、実は動物性原材料よりも多く使用されている可能性があるのです。

例えば、キャットフードの原材料表記が「鶏肉、ポテトスターチ、ポテトプロテイン・・・」となっていた場合、ポテトスターチ+ポテトプロテイン=ポテトですから、実は合計すると鶏肉よりもポテトの方が使用量が多くなっている可能性もあるのです。

また、原材料表記は多い順には書かれていますが、具体的な使用量を確認することはできません。したがって実際は動物性原材料と植物性原材料の割合を知ることはできません。現実的には動物性原材料を多く含むかどうかは、キャットフードのラベルで判断するのは難しく、メーカーのホームページなどの情報をチェックし、それを信頼するしかありません。

ねこ イラスト

そもそも動物性原材料が豊富なキャットフードは良いフードなのか?

とはいえ、現在のところ、実際に動物性原材料が多いキャットフードが、一般的なキャットフードよりも猫の健康にメリットがあるかどうかはわかっていません。また、筆者の経験からもドライフードでは、動物性原材料の割合よりも、原材料の品質や添加物の種類、加えている機能性栄養成分の種類や量などによって、実際の健康状態が変化するように感じています。
つまり、ドライフードにおいては、動物性原材料の割合はそこまで猫の健康に影響しないため、原材料表記にはあまりこだわらなくても良いと考えています。

ただし、本当に良質な動物性原材料のみを使用しているキャットフードも存在します。それはやはり猫の健康維持にも非常に役立っていると感じていますが、非常に高価なため継続できるのは一部の方に限られています。

グレインフリーは本当に体に良いの?

また、最近では良いキャットフードの一つとして、米や小麦などの穀物類を含まない「グレインフリー」が注目されています。これは肉食動物である猫は、穀物類の消化が苦手なため、それを含まないキャットフードの方が猫にとってより安心して使用できるという考えに基づいています。

もちろん、穀物類が除かれた分を補うものとして、良質な動物性原材料が加えられていれば良いのですが、残念ながらほとんどのグレインフリーのキャットフードは、穀物類の代わりにイモ類やマメ類など穀物類以外の植物性原材料で補っています。

一般的には穀物類よりもそれらの方が猫にとって負担が少ないと考えられていますが、実際のところははっきりせず、さらにはマメ類の成分の中には猫にとって負担のかかるものもあるのでは、という考えもあり、筆者個人としては、グレインフリーのキャットフードがものすごく優れているかというと、そんなに変わらないのでは、と考えています。

 

良いキャットフードを選ぶ4つのポイント

では、良いキャットフードを選ぶためには、どのようにすれば良いのでしょうか。
今のところ、「総合栄養食」「高品質な原材料」「不要な添加物なし」「厳密な製造管理・品質管理」といったポイントで選ぶのが現実的だと考えています。

総合栄養食に関しては、前述のとおり、猫の栄養学に基づいて設計されていますから、キャットフードを主食として使用する際には、最低限守らなければならないポイントです。

原材料の品質に関しては、やはりメーカーがしっかりと品質管理をしているものの方が、キャットフードの嗜好性(食いつき)や消化性が良いように感じています。ただし、その基準については、「オーガニック」や「ヒューマングレード」など様々なものがありますが、キャットフードにおいては、それらの言葉にもはっきりとした定義がないため、やはりここではケースバイケースで選ぶべき、とお伝えするしかできません。
現実的にはなかなか大変ですが、より信頼性の高い情報を得るために、気になる点はメーカーに直接問い合わせると良いでしょう。

添加物は、やはり着色料や発色剤、香料など、猫にとって不要なものを使っていないキャットフードの方が良いと考えています。ただし、キャットフードという加工品である以上、酸化防止剤など最低限の添加物は必要になります。

また、製造管理や品質管理は、キャットフードを作ったり、保管したりする上で、衛生的な管理や、加工品としての品質管理は、原材料や添加物と同じくらい重要です。したがって、こういった点についても第三者機関の認証があるのかなど、チェックすることをお勧めします。

 

キャットフードを使うからこそ取り入れたいサプリメント

キャットフードは一昔前に比べると格段に品質が向上しました。またペットフード安全法なども整備されつつあり、以前のような粗悪なキャットフードを見かけることは少なくなりました。
しかし、実際に多くの猫を診察させていただいていると、少なからずいろんな病気にキャットフードが影響を与えているのを実感しており、それを踏まえると、まだまだキャットフードは発展途上の食べ物だと考えています。

そのため、猫がより健康に過ごすために、キャットフードだけでなくサプリメントを取り入れた健康管理をお勧めしています。特に病気に対するものではなく、元気な姿を維持させるサプリメントとしては、機能性成分を抽出させたサプリメントよりは、原材料そのものを摂取できるサプリメントをお勧めしています。これは現在の最先端の栄養学では、特定の機能性成分を摂取するよりも、その成分を含む食材自体を摂取した方が、健康に有益だということがわかってきており、その考えに基づいてお勧めしています。

例えば、免疫に働きかける成分として、βグルカンというものがありますが、βグルカンを抽出したサプリメントよりも、キングアガリクス のような、βグルカンの原材料であるアガリクスそのものを摂取できるサプリメントをお勧めします。

キャットフードの選び方まとめ

猫は完全な肉食動物ではありますが、その一方でキャットフードは、コストパフォーマンスを改善するために、植物性原材料を多く使用しています。また、その辺りをキャットフードのラベルで評価するのは難しいのが現状です。

その中でより猫の健康維持に役立つキャットフードを選ぶのは、なかなか難しいのですが、最低でも「総合栄養食」「高品質な原材料」「不要な添加物なし」「厳密な製造管理・品質管理」といったポイントで、より良いキャットフードを選んであげると良いでしょう。
さらには、キャットフードでより健康的に過ごすためにも、良質なサプリメントを取り入れることをお勧めします。

執筆者

西原先生

西原 克明(にしはら かつあき)先生

 

森のいぬねこ病院グループ院長

帯広畜産大学 獣医学科卒業

略歴

北海道、宮城、神奈川など様々な動物病院の勤務、大学での研修医を経て、2013年に森のいぬねこ病院を開院。現在は2病院の院長を務める。大学卒業以来、犬猫の獣医師一筋。

所属学会

日本獣医学会、動物臨床医学会、獣医がん学会、獣医麻酔外科学会、獣医神経病学会、獣医再生医療学会、ペット栄養学会、日本腸内細菌学会

 

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  • 森のいぬねこ病院グループ 院長

    西原克明先生

    獣医師

  • 増田国充先生

    増田国充先生

    獣医師

  • 大谷幸代先生

    愛玩動物飼養管理士

    青山ケンネルスクール認定A級トリマー

    メディカルトリマー

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    動物看護士・トリマー

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  • 大柴淑子先生

    動物看護士(元)

    ペットアドバイザー