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犬の肝臓腫瘍(肝臓がん)の原因、治療、予防法

獣医師執筆

犬困る

森のいぬねこ病院グループ院長

日本獣医学会、動物臨床医学会、獣医がん学会所属

西原 克明(にしはら かつあき)先生

犬の肝臓腫瘍ってどんな病気ですか?

犬、質問

犬の肝臓腫瘍は、肝臓に発生する腫瘍(がん)の総称で、主なものに肝細胞腺腫(ヘパトーマ)、肝細胞癌があります。

 

また、厳密には肝臓ではありませんが、肝臓に深く関係している臓器の胆嚢や胆管の腫瘍として、胆管癌があり、中には肝臓の腫瘍と胆管癌が同時に発生しているケースもあります。

 

さらには、リンパ腫、扁平上皮癌、血管肉腫、血管腫、肥満細胞腫と行った腫瘍が認められることもあります。

 

犬の肝臓腫瘍に罹りやすい犬種を教えて下さい

多い犬種

肝細胞腺腫や肝細胞癌に罹りやすい特定の犬種は知られていません。

 

犬の肝臓腫瘍の原因って何かありますか?

チェック法

どの肝臓腫瘍も、はっきりとした原因はわかっていません。

肝臓腫瘍に限らず、一般的に腫瘍は、傷ついた細胞内のDNAがうまく修復されずに、勝手に自己増殖をしてしまう病気なのです。

そしてDNAを傷つけたり、修復したりするのには、様々な要因が関わっています。

 

中でも肝臓は、体内に取り込まれた様々な物質を代謝したり、免疫細胞を調節したりしますので、実に多くの影響を受けやすい臓器と言えます。

そのため、ストレス、肥満、不摂生な栄養など、体への負担が大きい生活を続けていると、肝臓の負担もどんどんと大きくなり、肝臓腫瘍のリスクになっている可能性があります。

 

犬の肝臓腫瘍の症状、余命

(どのような症状がありますか?動物病院を受診するポイント)

犬 受診

肝臓はよく『沈黙の臓器』と呼ばれ、何かしらのダメージを受けても、その予備能力が高いため、症状に現れることがあまりありません。

 

しかし、予備能力で対処しきれないほどのダメージを受けると様々な症状を示すようになります。主な症状は、食欲不振、元気消失、嘔吐、体重減少といった、肝臓以外の病気でも見られるものがほとんどです。

 

つまり、症状だけで肝臓の腫瘍かどうかを判断することは難しいのです。さらに、肝臓腫瘍が進行すると、黄疸や腹水といった症状も見られるようになりますが、やはりこれも他の肝臓の病気、あるいは肝臓以外の病気でも見られるため、肝臓腫瘍を見抜くことは非常に難しいと言えます。

 

ですので、様々な症状で、肝臓腫瘍を疑う必要がありますから、特に高齢の犬では、ちょっとした症状でも油断せず、早めに動物病院を受診することが重要です。そして、肝臓腫瘍の多くは、血液検査やレントゲン検査、超音波検査などを組み合わせることで、発見することができます。このような検査を積極的に受けることも大切です。

 

しかし、肝臓の腫瘍の具体的な診断名をつけることは容易ではありません。

というのも、上記のような検査では、『肝臓腫瘍』を強く疑うことができますが、それが肝細胞腺腫なのか、肝細胞癌なのか、他の腫瘍なのかを診断することはできません。

 

通常、こういった診断をつけるためには『開腹生検』という検査が必要になります。つまり、全身麻酔で開腹手術を行い、直接肝臓の疑わしい部分を切除して、病理検査を行うという検査です。

 

当然、開腹手術は犬にとって負担の大きいものですので、検査自体に負担がかかるというのは、飼い主の方にとっては抵抗があると思います。

しかし、肝臓腫瘍の種類によって、その余命は大きく変わっていますので、必要に応じて、開腹生検のような検査も十分考えていただく必要があります。

 

具体的な各肝臓腫瘍の特徴を以下に記します。

 

【肝細胞腺腫】

肝臓に発生する良性の腫瘍です。犬の肝臓腫瘍の中で最も発生の多い腫瘍です。

特に症状が見られず、健診などで偶然発見されることが多い腫瘍です。

 

良性腫瘍ですが、超音波検査などでは、他の悪性腫瘍との区別がつけづらく、開腹生検による診断が必要になります。

 

もちろん、良性腫瘍ですので転移の心配はありませんから、わざわざ開腹生検まで行うのは負担が大きいと考えてしまうかもしれません。

しかし、悪性腫瘍との区別ができないことに加え、たとえ肝細胞腺腫であったとしても、大きくなることで腫瘍が破裂し、腹腔内出血で命を落とすリスクもあるため、やはり積極的な診断は必要です。

 

肝細胞腺腫は、外科手術を行えば、完治ができる腫瘍ですので、余命が短くなるということはありません。

 

【肝細胞癌】

肝細胞癌は、犬の肝臓の悪性腫瘍の中でも最も発生が多い癌です。

悪性の癌ではありますが、症状はやはりある程度進行しないとわからないことがほとんどです。

 

そして進行すると、食欲不振、体重減少など、前述の一般的な症状を示すようになります。

発見された肝細胞癌は、外科切除によって治療を受けますが、文献的な報告では、その余命は様々で、数ヶ月〜1年以上とされるものが多いです。

 

しかし、中には肝細胞癌の半分以上が転移するという報告もあり、その場合は当然、余命が短くなりますので、外科手術の後も定期的に転移の有無をチェックしていく必要があります。

 

【胆管癌】

胆管は、肝臓で作られた胆汁が胆嚢へ運ばれる際に通る導管です。胆管は肝臓の中を通る肝内胆管と肝臓の外を通る肝外胆管があり、そのいずれでも胆管癌が発生する可能性があります。

 

胆管癌は進行が早く、また肝臓へも広く転移する非常に悪性度の高い腫瘍です。外科手術で治療をしても、転移が早いためあまり延命効果はなく、残念ながら今のところ有効な化学療法もありません。

 

【その他の腫瘍】

肝臓には他にも様々な腫瘍が発生しますが、肝臓から発生する腫瘍、他から転移してくる腫瘍など、その種類によって進行の早さや余命は変わってきます。

 

しかし、全般的に肝臓に発生する悪性の腫瘍は、残念ながら良い治療方法は今のところ存在しません。

例えば、体のあちこちのリンパ節が腫れる『多中心性リンパ腫』と呼ばれるリンパ腫は、悪性腫瘍の中でも化学療法(抗がん剤)が効きやすい腫瘍なのですが、肝臓に発生するリンパ腫は、あまり効果がありません。

 

犬の肝臓腫瘍の治療法

(どのようにして治療しますか?手術、抗がん剤など)

犬の治療

肝臓腫瘍のほとんどは、肝臓の中で1ヶ所だけに発生した場合には、外科手術が治療の第一選択になります。

 

現在では、肝臓腫瘍の外科手術ができる動物病院も増えてきています。しかし、中には大きな血管を巻き込んだタイプなど、手術が困難な腫瘍もありますし、また、非常に小さな、見逃しやすい腫瘍が隠れていることもありますので、外科手術の前には、CT検査など、精密な検査を受けられることをお勧めします。

 

また、肝臓腫瘍のほとんどは、効果的な化学療法(抗がん剤)や放射線療法はなく、今まではあまり積極的に実施されていませんでした。しかし、近年は、低用量化学療法、メトロノーム療法、あるいは動注化学療法など、新しい治療方法を取り入れている施設もあり、その効果が注目されています。

 

犬の肝臓腫瘍の治療例

犬の治療例

当院では、犬の肝臓腫瘍は、健康診断などで腹部の超音波検査を実施した際に偶然見つかることがほとんどです。その場合、血液検査などで明らかに肝臓の障害が見られる場合は、CT検査など積極的に精密検査をお勧めし、外科手術の計画を立てていきます。

 

また、偶発的に発見されても、そのほかの検査で明らかな異常がなく、また症状も全く認めない場合は、万が一悪性だった場合に進行してしまうリスクをお話しした上で、肝臓腫瘍の大きさの変化を経過観察していくこともあります。

 

その場合は、やはり大きくなるようでしたら、たとえ良性の腫瘍であっても、腫瘍が破れて大量出血を起こす可能性があるため、外科手術をお勧めします。大きさの変化がない、あるいは小さくなるようでしたら、腫瘍以外の可能性もあるため、すぐに手術してしまうのではなく、引き続き定期的な大きさのチェックを行なっています。

 

その一方で、何かしらの症状を伴ったケースや、すでにかなり進行してしまっている肝臓腫瘍の場合は、1ヶ所だけの発生でなおかつ転移が認められない場合は、早急にCT検査を行い、外科手術を強くお勧めしています。

 

ただし、複数ヶ所に腫瘍があって、全部の切除が難しい場合や、あるいは転移が見られたりして手術ができない場合には、あまり積極的に化学療法などは行っていません。もしできる限りの獣医療を希望される場合は、ガンの専門医や大学病院を紹介させていただいています。

 

とはいえ、手術以外の治療は何もしないのではなく、インターフェロン療法や、アガリクスなどの免疫調整効果のあるサプリメントなどは積極的に使用し、少しでも生活の質を良く保てるようなお手伝いはさせていただいています。

 

犬の肝臓腫瘍 食事で注意することや予防法

(普段からどんなことに注意して飼ったらいいですか?)

予防法

今のところ、犬の肝臓腫瘍の発生原因は不明なため、明らかな予防方法はありません。

 

しかし、腫瘍は一般的に、ストレスや肥満、不摂生な栄養摂取などがリスクになると考えられています。それらは、体に細かな炎症を引き起こし、その炎症の積み重ねが、細胞を腫瘍化させるリスクになってしまいます。ですので、適切な運動や栄養管理、良質な食事など、良い日常生活を送ることが、犬の肝臓腫瘍の予防につながるかもしれません。

 

また、アガリクスなど免疫調整作用のあるサプリメントは、そういった微細な炎症を抑える効果も期待できます。実際に、肝臓の腫瘍ではありませんが、肝臓に障害が見られる犬に、良質なアガリクスのサプリメントを取り入れることで、改善するケースもあります。こういったサプリメントを日常的に取り入れることも良いと考えます。

 

執筆者

西原先生

西原 克明(にしはら かつあき)先生

 

森のいぬねこ病院グループ院長

帯広畜産大学 獣医学科卒業

 

略歴

北海道、宮城、神奈川など様々な動物病院の勤務、大学での研修医を経て、2013年に森のいぬねこ病院を開院。現在は2病院の院長を務める。大学卒業以来、犬猫の獣医師一筋。

 

所属学会

日本獣医学会、動物臨床医学会、獣医がん学会、獣医麻酔外科学会、獣医神経病学会、獣医再生医療学会、ペット栄養学会、日本腸内細菌学会

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著者⼀覧 Author

  • 森のいぬねこ病院グループ 院長

    西原克明先生

    獣医師

  • 増田国充先生

    増田国充先生

    獣医師

  • 大谷幸代先生

    愛玩動物飼養管理士

    青山ケンネルスクール認定A級トリマー

    メディカルトリマー

  • 山之内さゆり先生

    動物看護士・トリマー

  • 國澤莉沙先生

    愛玩動物飼養管理1級

    ホームドッグトレーナー1級

    小動物看護士他

  • 大柴淑子先生

    動物看護士(元)

    ペットアドバイザー