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犬が罹りやすい冬の病気対策(皮膚の病気など)

獣医師執筆

犬の冬対策

森のいぬねこ病院グループ院長

日本獣医学会、動物臨床医学会、獣医がん学会所属

西原 克明(にしはら かつあき)先生

犬も人間と同じように寒さや乾燥といった冬の環境変化によって、体調も影響を受けます。ここでは、実際に冬場の動物病院でよく診る病気について、その対策方法などをお伝えします。

犬の泌尿器系の病気対策

冬になると寒さのせいか、犬のお水を飲む量が減ったり、トイレを我慢しやすくなります。それらが、泌尿器系のトラブルのリスクを高くしてしまいます。

特に、膀胱結石や尿道結石などの尿石症、細菌性膀胱炎などが多く見られるようになります。これらの病気では、血尿や排尿時の痛み、あるいは頻尿(1回の尿量は少ないけど、数分おきにトイレをする状態)やトイレで踏ん張るけど尿が出ないような状態が見られます。

このような症状が見られた場合、犬にとって辛い状態になっていますので、なるべく早く動物病院を受診するようにしてください。特に尿が出ない場合は命に関わる状態ですので、緊急的に受診する必要があります。

泌尿器系のトラブルを防ぐには、普段からお水を飲む量をしっかり確保すること、そして定期的な尿検査がお勧めです。

お水をたくさん飲ませるには、ウェットフードを食べさせるのが手っ取り早く、しっかりと水分摂取ができます。同じ水分量でも、ドライフード+水よりもウェットフードの方が尿量が多いという研究結果もあります。また、ペットボトルタイプの給水器ではうまくお水が飲めない犬もいますので、器にたっぷりのお水を入れていつでも飲めるようにしてあげてください。

また、冬場は寒さもあってトイレを我慢しがちになります。また、ストーブの前やコタツの中でよく眠っている犬は、トイレの回数が減りがちになります。トイレを我慢することも膀胱炎のリスクを高めますので、なるべくこまめにトイレをさせるようにしてあげてください。

犬の関節系の病気対策

冬になると、人間でもよく「関節が痛い」という話を聞くようになります。犬の場合も経験的ではありますが、関節の問題で来院するケースが目立つように感じています。

犬の関節の病気には様々なものがありますが、この時期に症状が強く出るものは、ほとんどが慢性の関節炎、つまり完治が難しい関節炎です。

慢性の関節炎は、先天的に関節の異常を持っている犬と、老齢の犬によく見られ、特に老齢の関節炎は、小型犬よりは大型犬の方が圧倒的に多く見られます。さらには前肢よりも後肢、膝と股関節に症状が認められることが多く、後肢の歩き方に異常、つまり足を着きたがらない、もしくは足を引きずると言った仕草が見られた時には要注意です。

さらに症状が見られなくても、潜在的に関節に問題を抱えている高齢犬も多いと言われており、明らかな歩き方の異常が見られなくても、日常の動作に「なんとなく年取ったなあ」と感じるようであれば、動物病院で検査を受けても良いかもしれません。

慢性の関節炎は、症状があるときは、とにかく安静にすることが重要です。その上で消炎鎮痛剤を投与します。痛みや歩行の異常が落ち着いてきたら、リハビリを行い、徐々に日常の動作を行うようにします。

また、症状がない時には、適度な運動と体重管理、そしてサプリメントの服用をお勧めしています。サプリメントは様々なものがありますが、良質なコンドロイチンやグルコサミン製剤、緑い貝やサーモンに含まれる不飽和脂肪酸などを使うことが多いです。

関節炎の予防は、確実な方法ではありませんが、最も大切なのが『体重管理』、つまり肥満予防です。そして、肥満予防には適切な食事と運動管理が必要です。また、予防的にサプリメントの投与もお勧めしていますが、これは確実に予防効果が示されているわけではありません。

特に冬場は犬の運動量が落ちがちです。すでに関節炎を患っている犬は無理は禁物ですが、体重管理、筋肉量を維持するためにも、暖かい時間帯のお散歩などで運動量を確保するようにしましょう。

犬の呼吸器系の病気対策

冬の間の乾燥や外とお家の中の寒暖差が、呼吸器系の負担になることがあります。

呼吸器の中でも、特に『咳』が症状に見られる病気は注意が必要です。冬場は、室内と外との寒暖差が気道粘膜を刺激するため、咳が出やすくなります。咳はどんな原因であれ、咳をすること自体が気管にダメージを与えてしまい、病態を徐々に悪化させてしまいます。

咳は主に下部呼吸器、気管や気管支、肺に問題が見られると症状に表れます。ちなみに咳は呼吸器だけでなく、循環器すなわち心臓に問題がある場合でも見られる症状です。何れにしても、症状を放置して重症化してしまうと、命に関わる状況に陥ることがあるため、繰り返す咳が見られたらなるべく早く動物病院を受診するようにしましょう。

高齢な小型犬で気をつけたい『気管虚脱』

また、特に小型犬の高齢犬で気をつけたいのが『気管虚脱』と呼ばれる病気です。気管は元々は軟骨成分を中心にできていますので、息を吸ったり吐いたりする程度の圧力では変形することはありません。しかし気管虚脱になると、その軟骨が硬さを失い、呼吸の圧力で変形してしまい、空気の通り道が塞がってしまったりします。そうすると呼吸が苦しくなり、咳をするようになるのですが、気管虚脱の場合は、咳が止まらなくなる発作状態に陥ることもあります。

気管虚脱は、変性した軟骨を元に戻すことはできませんが、外科あるいは内科的に治療を行うことで、症状を軽くすることはできます。また、最近ではω(オメガ)3やω(オメガ)6を含む不飽和脂肪酸のサプリメントが症状の緩和に役立っているという報告もありますので、ぜひかかりつけの動物病院に相談してみてください。

気管虚脱はその発生メカニズムが不明なため、完全な予防方法はわかっていませんが、一般的には肥満が大きなリスク要因と考えられています。また経験的には、お散歩などでリードを首輪でグイグイ引っ張ることで、気管に負担がかけていることも関わっているのではと考えています。

特に冬場は、急激な温度差のある環境変化が負担になることもありますので、お散歩の前後では、玄関先で休んでから出入りするなど、温度変化に慣れる時間を作ってあげると良いでしょう。

犬の皮膚系の病気対策

冬場の乾燥は人間と同じく、犬にも皮膚に大きなダメージを与えます。特にアレルギーなど慢性の皮膚病を持つ犬は、健康な犬と比べて皮膚からの水分の蒸発量が多く、乾燥肌になりやすいと言われています。

冬になると空気が乾燥することはもちろん、犬の中にはストーブやファンヒーターの前で、気持ちよさそうに眠っているケースも多いようです。しかし、これら暖房器具に直接当たっていると、皮膚の乾燥がさらに進んでしまいます。

乾燥した皮膚は、フケが多くなり、またかゆみも見られるようになります。乾燥によるフケは、体全体に見られますが、アレルギー性皮膚炎を患っている犬の場合は、顔まわりや耳、手足、お腹、お尻周りにかゆみが出ることが多く、また消化器アレルギーと呼ばれる遅延型のアレルギーをもつ犬では、背中からお尻にかけてのかゆみが見られることが多いです。

犬の乾燥肌対策は、空気を加湿させることも必要ですが、それだけではなかなかフケが治らないことも多く、犬用の保湿剤や保湿スプレーを使用することをお勧めします。

さらには、皮膚成分の多くは『脂質』からできていて、脂質は食事の影響を強く受けますので、良質な食事を摂ることや皮膚の代謝に関わるサプリメント(不飽和脂肪酸など)を摂取することも大切です。

特にアレルギー性皮膚炎を患っている犬は、免疫力を調えることも大切です。サプリメントの中には、アガリクスなど免疫調整を期待できるものもありますので、日常的にそういったサプリメントを取り入れることで、スキンケアの役に立つことがあります。

執筆者

西原先生

西原 克明(にしはら かつあき)先生

 

森のいぬねこ病院グループ院長

帯広畜産大学 獣医学科卒業

 

略歴

北海道、宮城、神奈川など様々な動物病院の勤務、大学での研修医を経て、2013年に森のいぬねこ病院を開院。現在は2病院の院長を務める。大学卒業以来、犬猫の獣医師一筋。

 

所属学会

日本獣医学会、動物臨床医学会、獣医がん学会、獣医麻酔外科学会、獣医神経病学会、獣医再生医療学会、ペット栄養学会、日本腸内細菌学会

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著者⼀覧 Author

  • 森のいぬねこ病院グループ 院長

    西原克明先生

    獣医師

  • 増田国充先生

    増田国充先生

    獣医師

  • 大谷幸代先生

    愛玩動物飼養管理士

    青山ケンネルスクール認定A級トリマー

    メディカルトリマー

  • 山之内さゆり先生

    動物看護士・トリマー

  • 國澤莉沙先生

    愛玩動物飼養管理1級

    ホームドッグトレーナー1級

    小動物看護士他

  • 大柴淑子先生

    動物看護士(元)

    ペットアドバイザー