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犬の尿路結石(原因、治療、予防法)

獣医師執筆

犬の尿路結石

森のいぬねこ病院グループ院長

日本獣医学会、動物臨床医学会、獣医がん学会所属

西原 克明(にしはら かつあき)先生

 

犬の尿路結石は、動物病院でも比較的多く見かける病気です。しかし、発見が遅れると重症化することもあります。さらには、再発も非常に多く、治療だけでなくその予防にも十分な注意が必要になります。

 

そこで今回は、犬の尿路結石について、その原因や症状、そして治療や予防などの対策方法についてお伝えします。

 

犬の尿路結石とは

メモ

動物の体には、尿を作るためにいくつかの臓器が機能しているのですが、それらをまとめて『泌尿器』と呼んでいます。泌尿器には、腎臓、尿管、膀胱、尿道があり、これらの順番に尿が流れ、最終的には体の外へ排泄されています。犬の尿路結石では、これら泌尿器系の臓器のどこかに結石が作られる病気で、それによって様々な症状が見られるようになります。

 

また、犬の尿路結石と同じような呼び方で、『犬の下部尿路疾患』と書かれてあることもあります。下部尿路疾患とは、膀胱や尿道に病変が見られる病気の総称で、そのほとんどが膀胱結石や尿道結石のため、同じような表現で用いられることがあります。

 

犬の尿路結石の症状

犬の尿路結石では、排尿に関係して、下記のような様々な症状が見られるようになります。これらの症状は一つだけではなく、ほとんどの場合は複数の症状が組み合わさって見られることが多いです。

 

頻尿

頻尿とは、何度も排尿をする状態のことで、排尿を済ませたばかりの数秒〜数分のうちに再びトイレの姿勢をとり、それを何度も繰り返すようになります。膀胱結石や尿道結石では、膀胱や尿道の粘膜に炎症を引き起こし、膀胱炎や尿道炎となって犬の尿意を刺激します。そのため、尿が溜まっていないにも関わらず、何度もトイレに行きたがるようになり、頻尿状態になります。

 

また一方で、結石が膀胱の出口や尿道に詰まってしまうことによって、頻尿になるケースもあります。この場合、膀胱に溜まった尿が、詰まった結石の隙間から少しずつ漏れ出るような形で排尿されるのですが、わずかしか排泄されず、何度もトイレに行くようになってしまいます。そうするとどんどん尿が体に溜まってしまい、腎臓を障害したり、場合によっては尿毒症という命に関わる状態に陥ることがあるため、速やかに治療を行う必要があります。

 

しかし、見た目では、炎症による頻尿なのか、詰まりによる頻尿なのかは区別がつかないため、犬に頻尿症状が見られた場合には、様子を見るのではなく、すぐ動物病院を受診するようにしてください。

 

血尿

犬の尿路結石では、尿に血が混ざる『血尿』という症状が見られることもあります。血尿には、尿全体が赤みがかったようになるタイプ、あるいは尿の中に血の塊(血餅)が混ざるタイプ、あるいは両方見られるタイプなど、様々な症状の出方があります。血尿は結石が粘膜を傷つけて出血してしまうことで生じます。

 

排尿時の痛み

犬の尿路結石では、排尿するときに痛みを伴うことがあります。これは排尿するときに犬が痛そうに鳴いたり、排尿姿勢を取ってもすぐにやめてしまうという仕草が見られるようになります。これは結石によって粘膜が傷害されることによる痛みや、結石によって引き起こされた膀胱炎や尿道炎の痛みが原因となります。

 

その他

犬の尿路結石では、ほとんどが上記のような症状ですが、病気が進行すると、元気や食欲が落ちたり、嘔吐などの症状が見られることがあります。特に結石によって尿道が詰まってしまい、尿が排泄されない状態の場合には、非常に危険な状態に陥ってしまいますので注意が必要です。

 

犬の尿路結石の原因

犬の尿路結石は、結石の種類によって分類されますが、そのほとんどが『ストルバイト結石』と『シュウ酸カルシウム結石』によることがわかっています。

 

ストルバイト結石

リン酸アンモニウムマグネシウムとも呼ばれる結石で、若い犬や雌犬に比較的多いと言われています。ストルバイト結石は、尿の中に入り込んだ細菌が核となり、そこにマグネシウムなどのミネラルが結晶を形成して結石となります。そのため、雄よりも尿道が短い雌犬は細菌が侵入しやすく、ストルバイト結石になりやすいと言われています。

 

またストルバイト結石は、尿がアルカリ性になること、尿の中にマグネシウムが多くなることで作られやすくなります。これらは、主に食事の成分が大きく関わっています。以前は、ドッグフードにマグネシウムが多く含まれていたりと、フード自体がストルバイト結石のリスクとなっていたのですが、現在のドッグフードの多くはマグネシウムの量が調整されてはいます。しかし、現実にはまだまだドッグフードが原因とみられるストルバイト結石が発生しています。

 

いずれの結石も、水分摂取量が少ない犬や、トイレを我慢しがちな犬ではリスクが高くなります。特に肥満の犬や運動不足の犬では、水分摂取量が減りますので、やはり結石のリスクが高くなってしまいます。

 

シュウ酸カルシウム結石

シュウ酸カルシウム結石は、近年ストルバイト結石よりも多く見られるようになっています。ストルバイト結石はマグネシウムを多く摂取すると作られやすくなるのですが、シュウ酸カルシウム結石は逆にマグネシウムの摂取量が少なすぎると作られやすくなり、さらにはカルシウムが多くなったりしても結石が形成されやすくなります。

 

いずれの結石も、細菌やミネラル以外の要因として、肥満や運動不足、水分摂取量の減少なども結石形成のリスクになることがわかっています。特に冬の寒い時期は、運動量が減りやすく、さらには犬自身もお水を積極的に飲まなくなるため、尿路結石にかかるリスクが非常に高くなります。

 

犬の尿路結石の診断

犬の尿路結石は、尿検査を実施し、顕微鏡で結石の結晶を確認することが最も確実な診断方法となります。そのため、犬の尿路結石の診断には、尿検査が欠かせないのですが、飼い主の方が尿を採取する際は、できるだけ不純物が混ざらないように採取すること、そして採取してからなるべく早く検査を実施することが重要になります。

 

また、ご自宅での採尿が難しい場合には、動物病院で採取することもあります。さらには、血尿の場合には、赤血球が多量に混ざり、結晶を見つけづらくしてしまうこともありますので、一度の尿検査で確定診断できず、何度か繰り返し行うこともあります。

 

一方で、尿路結石が進行すると目に見える大きさになり、レントゲン検査や超音波検査ではっきりと見えるようになり、確定診断することができます。ただし、結石の種類によってはレントゲンに写らないタイプもありますので、必ず尿検査など他の検査と合わせて診断する必要があります。

 

犬の尿路結石の治療

治療

犬の尿路結石の治療は、大きく分けて、外科療法と食事療法があります。外科療法は、結石が目に見える大きさで、膀胱を傷害している場合に行われ、手術で結石を摘出します。一方で、尿路結石が顕微鏡レベルの結晶状態の場合は、食事療法を行います。

 

食事療法では、ミネラルや尿のpHを調整する尿路結石専用の療法食を用いることで、結石の形成を抑えることができます。さらには膀胱に残った結晶は、自然に排出されますので、食事療法によって尿路結石の症状をコントロールすることができます。

 

また、ストルバイト結石の場合は、食事によって結石自体を溶解させることができます。したがって、目に見える結石があるものの、膀胱の傷害がわずかな場合は、外科手術を行わず、食事療法で結石を溶解させることもできます。また、これは個人的な経験ですが、腎臓や尿管に形成された結石は、食事療法では溶解されないことが多いように感じています。

 

食事療法では、療法食の栄養組成が非常に重要なため、他の食べ物を食べてしまうとその組成が崩れてしまい、十分な効果を得られなくなります。したがって、食事療法では、療法食とお水以外のものを一切口にしないようにすることが重要です。さらには療法食を食べることに加えて、水分もなるべく多く摂るようにすることも有効な治療方法になります。

 

また、結石の多くは、細菌が核になって形成されますので、外科療法でも食事療法でも、細菌をコントロールするための抗生物質を併用することがほとんどです。

 

犬の尿路結石の予防

犬の尿路結石は、一度治療をしても再発することが多いため、一度患ってしまった場合は、その後も再発予防に取り組むことが重要です。

 

再発予防の取り組みとしては、水分を多く摂るようにする、排尿を我慢させない、予防のための療法食を取り入れる、などの方法があります。

 

尿路結石は、尿が膀胱に長く留まるほど結石のリスクが高まりますので、尿量と排尿回数が増えることで、逆に結石のリスクを下げることができます。そのため、水分を積極的に摂って尿量を増やし、さらにその分トイレもマメにすることが、尿路結石の予防につながります。

 

また、療法食を予防的に食べさせることで、結石の形成を防ぐことができます。動物病院で処方される療法食は、総合栄養食の基準を満たすものがほとんどですので、通常のドッグフードと同じように食べさせても問題ありません。ただし、治療の食事療法と同じように、基本的にはその他の食べ物は避ける必要があります。最近では、療法食に影響を与えづらいおやつなども開発されていますので、どうしてもおやつを与えたい場合は、かかりつけの獣医師と相談の上、そういったものを利用する方法もあります。

 

さらには、直接的な予防ではありませんが、肥満と運動不足も尿路結石のリスクを高めます。日頃からの健康的な生活が尿路結石の予防につながります。

 

犬の尿路結石は、再発が非常に多い病気です。日頃から予防を心がけていても、どうしても再発してしまうこともあります。再発時はやはりできるだけ早く治療を開始した方が、犬にとっても負担が少なくなりますので、定期的な尿検査を行い、なるべく早く結晶の段階で発見できるように努めることも大切です。

 

犬の尿路結石のまとめ

犬の尿路結石は、頻尿や血尿が見られ、尿検査で診断することができます。ストルバイト結石の場合は、手術だけでなく食事療法で溶解させることができますが、シュウ酸カルシウム結石は、手術によって摘出する必要があります。

 

犬の尿路結石は、再発することが非常に多い病気ですので、一度結石を患った犬では、再発予防のために、療法食を続けることや、肥満の防止、水分摂取の増加などの対策に取り組むことが重要です。

 

執筆者

西原先生

西原 克明(にしはら かつあき)先生

 

森のいぬねこ病院グループ院長

帯広畜産大学 獣医学科卒業

 

略歴

北海道、宮城、神奈川など様々な動物病院の勤務、大学での研修医を経て、2013年に森のいぬねこ病院を開院。現在は2病院の院長を務める。大学卒業以来、犬猫の獣医師一筋。

 

所属学会

日本獣医学会、動物臨床医学会、獣医がん学会、獣医麻酔外科学会、獣医神経病学会、獣医再生医療学会、ペット栄養学会、日本腸内細菌学会

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  • 森のいぬねこ病院グループ 院長

    西原克明先生

    獣医師

  • 増田国充先生

    増田国充先生

    獣医師

  • 大谷幸代先生

    愛玩動物飼養管理士

    青山ケンネルスクール認定A級トリマー

    メディカルトリマー

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    動物看護士・トリマー

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  • 大柴淑子先生

    動物看護士(元)

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