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治りにくいトイプードルのマラセチア皮膚炎の原因・症状、治療を行う3つのポイント

愛玩動物飼養管理士執筆

プードルのマラセチア皮膚炎について

愛玩動物飼養管理士

青山ケンネルスクール認定 A級トリマー

大谷幸代先生

 

実は数ある犬種の中でもトイプードルはトップクラスに長寿な傾向がある事をご存知ですか?15歳を超えてもまだまだしっかりとしていて、元気いっぱい、食欲も旺盛、最近では20歳を超えることも珍しくないほどです。

ただトイプードルはそのチャームポイントでもある被毛が関係した皮膚トラブルに悩まされることも多々あります。中でも足にまつわるトラブルは日々の生活に支障をきたす重大な問題です。

今回はトイプードルとマラセチア皮膚炎についてご説明させていただきます。

 

トイプードルのマラセチア皮膚炎の原因

トイプードルはその見た目のか弱さ、繊細さとは異なり実はとても健康的で活発な犬種です。

若いうちは病院へ行く機会もほとんどなく過ごすことが出来るでしょう。

ただ中には

・足先を頻繁に舐める

・体をかゆがる

・地面や壁に体をこすりつける

・脱毛が目立つ

といったお悩みを抱えることがあります。これはマラセチアというカビの一種が体に付着したことで、皮膚トラブルが起きているサインです。

マラセチアの感染は外見からは判断できない上に、必ずしも不衛生な環境が原因ではありません。こまめにお手入れやトリミングを行っている場合でもそのリスクが身近にある事を知っておきましょう。

 

トイプードルがマラセチア皮膚炎を発症する原因で多くみられるのは

・自宅シャンプー後の生乾き

・散歩から帰宅した後の足洗い

・加齢

・他犬からの感染

などが考えられます。特に子犬やシニア犬など免疫力が低下気味にある時は、感染の確立も高まります。

せっかく「清潔」を目指し手掛けたお手入れも生乾きのままで終えてしまうと、時間の経過とともに雑菌が繁殖し、カビの原因になります。

被毛が濡れた後は必ずドライヤーで根本から乾燥させ、カビの繁殖を防いであげましょう。

 

マラセチア皮膚炎になりやすい犬種

マラセチアは真菌と呼ばれるカビの一種です。

子犬や高齢の犬に感染がたびたび見られます。感染をした場合の症状には個体差があるものの、脱毛や痒みに悩まれる病気です。

健康で免疫力が安定している場合、目立った症状にはつながらないものの、離乳や環境の変化、持病の悪化などがきっかけになり、重症化することがたびたびあります。

また日ごろの生活で、皮膚、被毛のお手入れ方法を間違ってしまうことでも発症の可能性が高まります。

例えば

・シーズー

・マルチーズ

・コッカー

・シュナウザー

・キャバリア

などの犬種は、足先の被毛が長く伸び、毛量も豊富です。そのため散歩後に足を洗うことで、足先が生乾きになり、雑菌やカビの繁殖につながることもあります。

また最近ではトリミングショップを利用せずに、自宅でシャンプーやカットを済ませるという方も増えています。この時、愛犬が嫌がるドライヤーがつい曖昧になってしまいがちです。脇や内股、耳の裏などの乾かし残りが原因で雑菌繁殖も起こります。

マラセチアは全ての犬に発症の可能性があるものの、被毛が長く伸びるタイプの犬にはより発症のリスクが高い事を知っておきましょう。

 

マラセチア皮膚炎の治療法

マラセチア皮膚炎の診断は患部の皮膚組織を検査することで確定出来ます。皮膚組織の検査には特段の痛みもなく、すぐに終えることが出来ます。

トラブルの早期解消には、原因の特定が欠かせないので、気になる症状があるときは、まず動物病院で検査を受けましょう。

検査の結果を受け、治療をするときは

・殺菌効果のあるシャンプーで洗浄

・抗生物質の服用

が基本です。体の表面についたカビをシャンプーで洗い流すこと、痒みが原因で出来た傷口を雑菌感染から守る事を続けることで、徐々に菌の保有数を正常に近づけます。

ただ子犬の場合、この方法と成長と共に免疫力が増大することとが相まって完治を目指すことが出来るものの、シニアにはそうはいきません。シニアの場合、子犬に比べ回復が遅い上に、免疫力も低下傾向にあります。痒みや脱毛からくるストレスも追い打ちをかけるでしょう。

シニアの場合は、獣医師から処方されたシャンプーや薬はもちろんのこと、日々の活力や免疫力向上につながるようなサプリメントの服用もおすすめします。

 

マラセチア皮膚炎のときに気をつけたいこと

マラセチア皮膚炎の治療法の1つに殺菌効果のあるシャンプーでの洗浄があります。この時、注意すべき点は

・被毛の根元から完全に乾燥させる

・全身くまなく確認し、生乾きの無いように乾燥させる

・タオルでゴシゴシと皮膚をこすらない

・ドライヤーの熱風を当てすぎない

・ブラシや飼い主の爪で愛犬の皮膚を傷つけない

ということです。マラセチア皮膚炎を発症している皮膚はすでにダメージを受けています。被毛で隠れてしまい目立たないだけで、小さな掻き傷が無数にできているでしょう。

より清潔に、洗い残しの無い様にも思いがちですが、くれぐれも刺激しないように優しく洗ってあげましょう。

 

またシャンプー後に使用するバスタオルや愛犬のベッドやサークルも殺菌を意識しなければなりません。これらにもマラセチア菌が付着しているからです。せっかく殺菌効果のあるシャンプーで洗浄しても再度、菌が付着してしまっては、悪循環に陥ります。

小型犬であれば、バスタオルではなく厚手のキッチンペーパーや使い捨て出来るタオルなどを活用すると、洗濯の手間を省けるのでおすすめです。

完治するまでは毎日、週に数回のこまめなシャンプーが必要です。この期間は、被毛を短く切り揃えておくとドライヤー時間の短縮にもなり、家族の負担も軽減されるでしょう。特に足先は、なかなか乾きにくい上に、愛犬も嫌がることが多いでしょう。完治までは足先にバリカンをかけておくと、通気性が向上し衛生的に保つことが出来ます。

 

こんなことでマラセチア皮膚炎がよくなったバース君

生後2か月で新しい家族のもとへやってきたバースは、まだ1㎏もない小さな子犬です。ただ環境の変化から下痢や食欲不振が続き、家族が不安を感じることも多々ありました。

トイレのしつけも不完全であったので、たびたび体が汚れてしまい、都度シャンプーを繰り返していたものの、気が付けば生乾きが起こり、痒み、脱毛へと症状は悪化してしまいました。

そこでバース君の状態を改善するために、まずは被毛を短くカットし、家庭でも簡単にお手入れが出来るようになりました。完治するまで、他犬への感染の危険性がありお店ではトリミングを引き受けることが出来ませんが、家庭で出来るケアを続けることで、成長とともに改善へ向かっています。

まだまだ体が小さく、食も細いので栄養を効率的に摂取するために、日々の食事にサプリメントをトッピングしつつ、完治を目指しています。

 

マラセチア皮膚炎にならないために、予防や日ごろのケアの3つのポイント

マラセチア菌は愛犬の体に常に存在する菌の一種です。普段であれば目立ったトラブルに発展することはありませんが、体調不良や間違ったお手入れが原因で問題となることもあります。

トイプードルとの生活では

  • 散歩の足洗い後は、水分を残さない
  • 自宅シャンプーの後はしっかりと乾燥させる
  • 痒みや脱毛など異変を感じた時は、すぐに動物病院を受診する

という点を心掛けてあげましょう。

散歩後の足洗いは乾いた布でも十分です。自宅でシャンプーをする場合は、被毛を短く切ってからがおすすめです。もしいつもと違うと感じた時は、症状が全身に広まる前に動物病院を受診して、早期完治を目指してあげましょう。

 

【大谷幸代先生】

トリマーさん

愛玩動物飼養管理士

青山ケンネルスクール認定 A級トリマー メディカルトリマー

学生時代にイギリスへドッグトレーニングの勉強のため、短期留学。その後、ペットショップ販売員、トリマー、ドッグトレーナー、ペットシッターなど様々な仕事を経験してきた。

ホリスティックケアアドバイザーや日本アロマテラピー協会認定アロマテラピーインストラクターなどの資格も取得。ペット関連用品の開発、雑誌などへのコラム執筆を手がけるなど、【犬を飼う生活から、犬と暮らす生活へ】の実現をめざし、幅広く活躍している。

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  • 森のいぬねこ病院グループ 院長

    西原克明先生

    獣医師

  • 増田国充先生

    増田国充先生

    獣医師

  • 大谷幸代先生

    愛玩動物飼養管理士

    青山ケンネルスクール認定A級トリマー

    メディカルトリマー

  • 山之内さゆり先生

    動物看護士・トリマー

  • 國澤莉沙先生

    愛玩動物飼養管理1級

    ホームドッグトレーナー1級

    小動物看護士他

  • 大柴淑子先生

    動物看護士(元)

    ペットアドバイザー