獣医師執筆
森のいぬねこ病院グループ院長
日本獣医学会、動物臨床医学会、獣医がん学会所属
西原 克明(にしはら かつあき)先生
トイプードルは、大半が換毛期にたくさんの抜け毛が見られる犬種の中で、比較的抜け毛が少ない特徴を持っています。
とはいえ、病気をはじめ、さまざまな原因で抜け毛=脱毛が見られることもあるため、日頃からのケアは大切です。
そこで今回は、トイプードルに見られる脱毛の原因と、そのケア方法についてお伝えします。
トイプードルにはさまざまな皮膚トラブルがあり、その影響で脱毛が見られることが多くあります。以下に筆者がよく遭遇するトイプードルの脱毛の原因となる病気について記します。
トイプードルに限らず、犬ではアレルギー性皮膚炎やアトピー性皮膚炎が多く見られます。アレルギー性皮膚炎は、環境や食べ物に存在するアレルゲンと呼ばれる、アレルギーを引き起こす物質により、皮膚にかゆみや脱毛などの症状が見られる病気です。
アレルゲンとなる物質は多様なものがあり、環境中のハウスダストや植物の花粉、あるいは虫などに反応することが知られています。また、牛肉や鶏肉などの肉類、あるいは魚や穀類、芋類、豆類などもアレルゲンとなることが知られています。
トイプードルがアレルギー性皮膚炎になると、皮膚の赤みやふけ、痒みに加えて、脱毛など被毛の症状も見られるようになります。特に、目や口の周り、耳、手足、お腹などに症状が出やすく、中には背中から腰回りにかけて毛が薄くなったり、脱毛が見られることもあります。
アレルギー性皮膚炎では、ステロイドや抗アレルギー薬といったお薬で治療しますが、いわゆる対症療法と呼ばれ、治療によって症状は改善するものの、根本的に解決しているわけではないので、原則的には生涯の治療が必要になります。
その一方でお薬の長期投与による副作用が問題になることもあり、動物病院の中には、さまざまなスキンケアを治療に取り入れて、少しでもお薬の使用量を減らす対策をしているところもあります。
トイプードルの皮膚炎では、細菌やカビ(真菌)の感染による皮膚炎も多く見られます。これらの感染は、ほとんどの場合は、強い病原性を持つ微生物が感染するのではなく、皮膚や環境中に日常的に存在するものが、何らかの原因で増えてしまったことが原因となります。
また、治療を繰り返すタイプの感染性皮膚炎の場合、アレルギー性皮膚炎などの別の皮膚病が隠れていて、それが治らないために感染性皮膚炎も併発しているケースが多く見られます。
感染性皮膚炎では、赤いポツポツした皮膚やカサブタが見られたり、かゆみやそれに伴う脱毛、あるいはかゆい場所の毛を噛みちぎって短くなっていたりすることがあります。感染性皮膚炎の治療は、抗生物質や抗真菌剤を使用します。
症状が全身的な場合は飲み薬、体の一部のみの場合は塗り薬を使うことが多いです。また薬浴と呼ばれる薬用成分を配合したシャンプーで洗浄することもあります。
皮膚は主に水分やタンパク質の他に脂質によって作られていますが、その脂質に異常が見られるのが脂漏症です。脂漏症は、皮膚がベタベタしたり、逆にカサカサしたりさまざまな皮膚症状が見られます。
基本的には脂漏症で脱毛することは稀ですが、脂漏症の場合、感染性皮膚炎やアレルギー性皮膚炎を併発していることも多く、その結果として脱毛が見られることがあります。
脂漏症は全身的に見られますが、特に耳や背中、足先などで症状が強く出ることがあります。トイプードルでは、筆者が知る限りは遺伝的な要因は不明ですが、実際に治療する中で、いろんな治療をしてもなかなか改善しないケースもあるので、先天的な要因もあるのでは、と感じています。
脂漏症の治療は、多くは対症療法で、炎症があるときにはステロイドで炎症を抑えたり、アレルギーや感染性皮膚炎を併発しているときはそれらの治療を行います。また薬浴や食事管理によってケアすることもあります。
いわゆるホルモンの異常で、トイプードルを含めて犬では甲状腺機能低下症や副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)といった内分泌性疾患が多いと思われます。これらホルモン異常による脱毛は、ほとんどはかゆみや炎症が見られないため、上記の皮膚炎とは明らかに皮膚のコンディションが異なります。
ただし、個人的な経験では、炎症やかゆみを併発しているホルモン異常も多く、症状だけで原因を判断するのは注意が必要だと考えます。
また、ホルモン異常の場合は脱毛以外にも、おしっこをたくさんして、その分たくさんお水を飲む「多飲多尿」という症状など、全身的な症状を伴うことが多いです。
内分泌性疾患の治療は、しっかりと調整できれば大きな問題なく寿命を全うできますが、状態によってはお薬の調整が必要になります。そのため、しっかりとした検査に基づく診断と、定期的な観察が重要です。
【その他】
トイプードルの脱毛は、上記以外にも、毛包(毛穴)の異常やがんなどさまざまな要因で起こります。また、トイプードルの中には老齢になると、いわゆる「いぼ」があちこちに見られ、そこからの炎症や脱毛が見られることもあります。
トイプードルは上記のようなさまざまな病気によって脱毛を含む皮膚症状が見られるようになります。
もちろんきちんとした治療を行い回復することができれば、ほとんどの場合は毛が生えてくるのですが、中には、病気自体はしっかりとコントロールできているのに、毛が生えてこないケースがあります。
その原因は不明ですが、皮膚へのダメージによって、毛周期(毛が生え変わる一連の流れ)が異常もしくは止まってしまっていると思われます。
また、特に炎症が起こった場所では、毛が生えてきたとしても、毛質や毛色が変わってしまうことがあります。また、筆者個人の経験では、外科手術などで毛を剃ったりした場合も、同じような変化が見られることが多いです。
そのため、トイプードルの脱毛では、なるべく日常から皮膚や被毛のコンディションには注意を払ってあげることも重要です。
トイプードルは、換毛期の毛の生え替わりが少ないため、毛が伸び続けます。そのため定期的なトリミングによるお手入れが必須で、日常的なブラッシングなども大切です。
お手入れが行き届かないときには、毛玉ができたりして、さらには皮膚のトラブル、脱毛の原因になることがあります。
また、栄養的なアプローチも被毛のケアには有効です。栄養バランスが取れた食事はもちろんですが、筆者の個人的な経験では、いくら食事のバランスが取れていても、被毛の状態を維持できるケースとできないケースがあります。
おそらく、食べ物ではなく、犬の腸の状態が良くないため、栄養の吸収が十分できていないのでは、と考えています。そのため消化吸収を改善させるアプローチも有効だと考えます。
例えば、アレルギーやがんなどを患ったトイプードルに、キングアガリクスを取り入れたとき、病気のケアと同時に「毛艶が良くなった」「毛量が増えた」という声を聞くことが多くあります。そのため、トイプードルの被毛のケアにキングアガリクスのような良質なサプリメントを取り入れることも有効だと考えます。
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トイプードルは、病気による抜け毛や被毛のコンディションの低下が見られることがあります。その原因はさまざまなため、脱毛が見られるときは、動物病院を受診して、その原因と対策をとってあげるようにしてください。
また、被毛がダメージを受けると、毛質や毛色が変わることがあるため、普段からの被毛のお手入れやスキンケアを行うことが大切です。
執筆者
西原 克明(にしはら かつあき)先生
森のいぬねこ病院グループ院長
帯広畜産大学 獣医学科卒業
略歴
北海道、宮城、神奈川など様々な動物病院の勤務、大学での研修医を経て、2013年に森のいぬねこ病院を開院。現在は2病院の院長を務める。大学卒業以来、犬猫の獣医師一筋。
所属学会
日本獣医学会、動物臨床医学会、獣医がん学会、獣医麻酔外科学会、獣医神経病学会、獣医再生医療学会、ペット栄養学会、日本腸内細菌学会
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