獣医師執筆
森のいぬねこ病院グループ院長
日本獣医学会、動物臨床医学会、獣医がん学会所属
西原 克明(にしはら かつあき)先生
「猫の免疫」に対して、あなたはどのようなイメージを持つでしょうか。年に1回の混合ワクチンや通称猫エイズと呼ばれる猫免疫不全症(FIV)などを想像する方が多いと思います。
もちろんそれらも猫の免疫の中では重要なものですが、実はそれら以外にも免疫に関わるものはたくさんあります。そこで今回は猫の免疫についてお伝えします。
猫も人や犬と同じように、細菌やウイルス、あるいはアレルギーの元になるような物質が体内に侵入してきた時、それを排除するためのシステムを持っています。それを免疫と呼びます。
しかし実は猫の免疫のメカニズムについては、まだまだわかっていないことがたくさんあります。
どういうことかと言うと、実際にはワクチンなど猫の免疫システムを利用した予防や治療は行われてはおり、一定の効果をあげているため、もしかしたら、猫の免疫については十分解明されていると思われる方も多いかもしれません。
ワクチンは、動物の免疫反応を利用して、感染症にかかりにくくする、あるいは重症化しにくくするためのものです。また、輸血において、猫も人や犬と同じようにネガティブな免疫系の副作用が見られることがあります。
このように、実際の診療の中で、猫の免疫システムが人や犬と同じようなものだと言うことはわかっているのですが、具体的にどのような物質が関わっていて、それぞれの物質がどのように働いているのか、それをしっかりと調べた研究報告が、猫の場合は非常に少ないのです。
そのため、猫の免疫についての専門的な話題は、まだまだ科学的に解明されておらず、専門家の経験や考えに基づくものも多いのが現状です。
そのような「経験レベル」の話ですが、以前、猫の感染症を専門に研究している獣医師から、次のようなことを言われたことがあります。
「世界で見ると、日本とイタリアだけ、猫のある特定の感染症が多い」というものです。その理由として考えられるのが、日本とイタリアは他の外国と比べて、建物が小さくて、建物同士の間隔も狭いことが挙げられていました。これは、各お家で暮らす猫にとっては、隣の猫との距離が近くなると言えます。
猫には本能的に縄張り意識が強く、近隣の猫が近くにいると強いストレスを感じます。しかし、日本やイタリアでは、建物同士の間隔が狭いため、お互いの距離が取れず、長期間ストレスにさらされてしまいます。その結果、ストレスによって免疫力が低下し、感染症を増やしている原因の一つなのでは、と言うことなのです。
猫でも過剰なストレスは免疫力を低下させてしまいます。日本とイタリアの猫は、お互いの縄張りが近くて、それがストレスとなって免疫力が低下し、感染症にかかりやすくなっている、と言う考え方です。
実際のところ、本当かどうかを裏付ける研究はなされていませんが、もしかしたら、近くに外で暮らす猫がいたり、相性の合わない猫と同居している場合はややストレスが多い生活をしているのかもしれません。
猫の免疫力を高める方法の一つとして、前述のとおり、ワクチン接種があります。日本では今でも、猫風邪と呼ばれる猫伝染性鼻気管炎(FVR)や猫カリシウイルス感染症(FCV)といった感染症にかかる猫が多くいます。
そのため、これらへの対策としてワクチン接種が推奨されています。猫のワクチン接種はこの2つの感染症に加えて、猫汎白血球減少症を加えた3種の感染症に対応したワクチンが一般的です。
猫のワクチンは、生後2ヶ月齢前後で1回目、そこから3週間〜1ヶ月おきに追加接種を行い、4ヶ月齢を過ぎてからの追加接種、その後は1年に1回の追加接種が推奨されています。
生後間もなくは、母猫からの移行抗体と呼ばれる免疫システムによって守られているのですが、2ヶ月齢あたりでその移行抗体が無くなり、感染症にかかりやすくなると考えられています。
また、生まれて初めてのワクチン接種は効果が表れにくく、1回だけの接種では十分な免疫力が得られない可能性があることから、ブースター接種といって何度かの追加接種が望ましいとされています。
このように、猫の免疫にアプローチした獣医療はありますが、その一方で「猫の好酸球性疾患」のように、はっきりとしたメカニズムがわかっていないものも存在します。好酸球とは、血液細胞の白血球の一種です。普段は血液中で、主に免疫系の役割を担っています。例えば寄生虫に感染した時や、炎症が引き起こされる病気などで多く見られます。
猫では、その好酸球が多く見られる病気があり、皮膚に多く見られるものを好酸球性皮膚炎、腸に多く見られるものを好酸球性腸炎などと呼びます。しかし、この猫の好酸球性の病気は、なぜ好酸球がたくさん集まっているのかがわかっていません。
そのため、根本的な治療が難しく、基本的にはステロイドの免疫抑制作用によって、好酸球の過剰な働きを抑える治療しかできないのです。ただし、好酸球のメカニズムでは、アレルギーが関係していると考えられています。
好酸球のアレルギー反応は、私たちの花粉症や食べ物アレルギーとはメカニズムが異なるため、なかなか検査で見つけることが難しいのですが、筆者の経験として、おそらく猫でもアレルギーが関係していると考えています。
好酸球性疾患を持つ猫の中には、食事管理によって劇的に症状が改善するケースがあります。食事管理では栄養成分による影響ももちろんありますが、抗酸急性疾患を持つ猫が食事管理で改善する時は、短期間で改善するため、おそらく栄養の問題ではなくアレルギーが改善していると考えています。
また、同じように免疫が関係している病気に「がん」があります。猫も人間と同じようにがんが非常に多い動物です。特にリンパ腫や乳がんが一般的に見られます。
がんは、体の調整機能を無視して、ひとりでにどんどんと細胞分裂を繰り返す病気です。健康な猫では、全身の細胞分裂が、免疫システムをはじめとした体の調節機能によって、コントロールされています。
しかし、がんはそのコントロールを無視して増殖を繰り返してしまう病気ため、がんも免疫システムが破綻した病気といえます。
がんも残念ながら、なぜ免疫システムが異常を引き起こしているのか、その原因はわかっていません。そのため一般的な治療としては、がんを取り除く外科手術、お薬でがん細胞を攻撃する化学療法、放射線でがん細胞を破壊する放射線療法という、いずれも対症療法がメインとなります。
人の医療では一部のがんは、このような対症療法によって完治できるケースもあるようですが、猫では今のところ完治させる術はありません。
また、これらの病気は原因不明のため、残念ながら予防方法もわかっていません。ただしこれは筆者の考えですが、日頃から免疫ケアに取り組むことによって、対策は可能だと考えています。
その中でも抗酸化ケアと腸内細菌のケアは猫でも必須だと考えており、筆者の動物病院でも希望される飼い主の方へ実践していただいています。
抗酸化ケアというのは、日常生活の中で体を傷つける様々な酸化反応があるのですが、人と暮らす猫の多くはこの酸化反応が過剰に引き起こされていると言われています。そのため、その酸化反応に対応しきれなくなり、免疫システムにも悪影響がおよび、様々な病気が引き起こされると考えられています。
そのため、主食の食事を工夫したり、サプリメントを取り入れたりして、抗酸化作用のある栄養成分を積極的に摂取することをお勧めしています。
また、腸内細菌については、人や犬と同じく、体の免疫細胞の70~80%が腸に存在し、腸内細菌は免疫細胞に大きな影響を与えていると考えられています。そのため、腸内細菌をケアすることによって、免疫システムを良好に維持できる可能性があります。
とはいえ、猫の腸内細菌は人や犬とは少し異なっていますので、人や犬用の乳酸菌やビフィズス菌などの腸内細菌を整えるものが、そのまま使えるかどうかは実はあまりわかっていません。また、猫専用の腸内細菌を整えるお薬やサプリメントは今のところありません。
その中で、キングアガリクスは猫でもその有用性を強く実感しています。アガリクスはキノコの一種で、腸内細菌に働きかけ、免疫力を整えたり抗酸化ケアに役立つ働きをしてくれます。
キングアガリクスは、学術的な検証を多数行っており、医学論文でもその有用性が認められいます。実際に筆者の動物病院でも猫の様々な病気に使用しており、病気のケアに役立てています。
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猫の免疫力については、ワクチンなどその力を利用して獣医療に応用する一方、詳細な免疫システムについては不明な点も多く、好酸球性疾患やがんなどまだまだ完治ができない病気もあります。
その一方で猫でも腸内細菌のケアや抗酸化ケアが免疫をはじめとする猫の健康維持に役立つ可能性があります。
執筆者
西原 克明(にしはら かつあき)先生
森のいぬねこ病院グループ院長
帯広畜産大学 獣医学科卒業
略歴
北海道、宮城、神奈川など様々な動物病院の勤務、大学での研修医を経て、2013年に森のいぬねこ病院を開院。現在は2病院の院長を務める。大学卒業以来、犬猫の獣医師一筋。
所属学会
日本獣医学会、動物臨床医学会、獣医がん学会、獣医麻酔外科学会、獣医神経病学会、獣医再生医療学会、ペット栄養学会、日本腸内細菌学会
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